【ビジョナリー対談】お客様自身が自分のニーズを分からない時代。「探索型」のスタイルが必要となる

2022.10.18

経営・マネジメント

【ビジョナリー対談】お客様自身が自分のニーズを分からない時代。「探索型」のスタイルが必要となる

INSIGHT NOW! 編集部
インサイトナウ株式会社

「家電ライフスタイルプロデューサー」として、YouTubeも始めて、活動の場を広げてきた神原サリーさん、そして「サービス」をサイエンスと捉え、サービスを事業のコアとして推進すべきだと提唱する松井拓己さん。このお二人で、これからの時代、モノや情報の提供側として、サービスをどのようにとらえ、顧客に提供していけばいいのかを語り合っていただきました。

松井  僕は元々メーカーで商品開発をしていたので、開発のプロセス、進め方にも問題があると思っています。開発には、量産をして店頭に並べるまでの手前にいくつかのゲートがあります。デザインレビューと呼ばれる、そうした関門をクリアするためには、やはり性能や機能が問われます。あとはコスト、損益分岐点です。開発者は機能やコストのプランニングシートは一生懸命書くのですが、サービスのプランニングシートは存在すらしません。つまり、「お客さんにどのように使ってもらって、どんな暮らしを実現してほしいのか」というところが設計できていない。サービスのコンセプトはあっても、設計に落とし込めていない。そのため、極端に言うと、スペックもコストも他社と同じで金太郎飴になってしまう。使い方やプロセスの評価が一番の価値であって、他社との差がつく領域になっているのに、そこがプランされていないのでけっきょく性能を押すしかない。性能という観点でしか商品開発の企画ができていないメーカーは、けっこう多いのではないかと思います。

神原  私がずっと言い続けているのもけっきょくそこです。

どうしても日本では、サービスは無料だという意識が抜けません。

松井  企業に装置を導入して、保守やメンテナンスをするというサービスがあります。トラブルがあったら駆けつけて修理をする、あるいはトラブルがないように日々の運用やメンテナンスを引き受けるといったアフターサービスです。そこで普段仕事をしていても、「早くしろ」とか「なんで壊れたんだ!」と、叱られることはあっても褒められることはあまりないそうです。そうすると現場が疲弊して、仕事が楽しくなくなっていく。自分たちの仕事を通して褒められ、お客さんの役に立っているという実感が得られるような事業スタイルに変えていかないと、このままでは誰もやりたくない事業になってしまいます。

家事も似ていると思うのです。毎日きれいに掃除ができていることが当たり前、料理も時間通りに出てくるのが当たり前になっていて、それがうまくいかないと、家族から不満を言われてしまう。これは家事だけなく、幅広くサービスという観点で見ると、いろいろな業界で起きていることです。それをどう楽しい仕事にするのか、価値を実感できる仕事にするのか。毎日積み重なって、平穏無事に過ごしていることがすごく良いことなのだと、どう実感できるかがとても大事だと思うのです。

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