「家電ライフスタイルプロデューサー」として、YouTubeも始めて、活動の場を広げてきた神原サリーさん、そして「サービス」をサイエンスと捉え、サービスを事業のコアとして推進すべきだと提唱する松井拓己さん。このお二人で、これからの時代、モノや情報の提供側として、サービスをどのようにとらえ、顧客に提供していけばいいのかを語り合っていただきました。
提供側は、スペックやコストというわかりやすいことは競いますよね。
松井 サービスで言うと、価値の評価は「成果に対する評価」と「プロセスに対する評価」に分けられます。成果とは、家電で言うと、バッテリーのもちや吸引力などの性能で、結果として得られる性能の評価です。プロセスとは、「電気のちょこっと貯金」のような使い方や、自走するから楽だとか、収納するとき一回上に上げなければいけないから手間がかかるからイマイチだ、といったことです。
この二つに分けたとき、家電だけでなく日本中の企業では、成果の評価を高める努力はすでにしています。他社にはない機能を開発しよう、スペック、コスパで勝負をしようといった努力です。しかし、プロセス側で価値を発揮できるような開発はほとんどしていません。していてもアピールできていなかったり、お客さんに伝わっていなかったり、お客さんがそのプロセスで価値を引き出せるようになっていません。メーカーとして、家電を買った後きちんと使えるようになるところまではフォローしますが、お客さんにとっては使えるようになってからが本番なのに、「そこからはお客さんが頑張って上手に使ってね」となってしまっているのです。
サリーさんは、そこからの先の「もっとこういうふうに使ったらどうですか」「あなただったら、このご家族だったら、こんな使い方のほうが面白いんじゃないですか」ということを引き出して、紹介しているのだと思います。これは、本当はメーカーがやらなければいけないでしょう。
神原 メーカーがプロセスの評価をしてないわけではないのですが、まずは機能(成果)を言ってから、使い勝手(プロセス)を言っている。私は家電の仕事をやり始めたときから、成果だけでなく、プロセスこそが知りたいと思っていました。それなら買いたいと思う人、ましてや女性なら、日々困っているときにそれをやってくれたら嬉しいと思う人がいるはずです。例えば掃除機であれば、そこまでの吸引力より、ゴミが捨てやすいほうが助かる人もいるでしょう。ある程度のことさえやってくれれば、今まで嫌だと思っていたことを解決してくれたほうがどれだけ助かるか。これは、私が家電の世界に入ってから繰り返し伝え続けていることです。メーカーの人たちは無自覚で、良いところに気づいていません。その良いところを引き出して、「この商品の良いところは、本当はここじゃないですか? それを言いましょうよ」と伝えるのが私の仕事です。
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インサイトナウ編集長対談
2022.08.12