前回 (https://www.insightnow.jp/article/11500) に引き続き、人材開発担当として、企業内で多くの研修を企画運営されてきた富士 翔大郎さんと、ビジネスパートナーとしてお仕事をご一緒されてきたマーケティングコンサルタントの金森努さんと鼎談(第2回目)をお届けします。記憶に残る研修を作とは、、必読です。
猪口 金森さんがおっしゃる「人事の研修をやって結果を出す」というストーリーは、完全にマーケティングのプロセスです。先ほどの熱量の話も、事前調査をして、自分が納得できてわかれば、そこに熱量は出てきますよね。
富士 研修の担当者は誰でもできます。誰しも過去に研修を受けたことがあるので、自分が受けたことのあるほんの少しの研修経験をベースに考えることができてしまうからです。そこが少し厄介なところです。自分の経験で「この研修ではこうだった」と言う人が実に多い。私のように全部忘れていれば一から向き合えますが、「このときの講師が良かったからこれを使おう」とか、「このときのコンテンツが良かったからこれにしよう」と言う人が大多数ではないでしょうか?
講師を選ぶ条件として「本を書いている人」と言ったのは、私なりのリスクヘッジでもあるからです。研修で身に付かなくても、本は課題図書として渡すので、少なくとも手元に残ります。研修でよく使うA4の薄いテキストは、制作数が少ないので実は本よりもコストが高くつきます。さらに、私の研修では講師が著者なのでサイン会をやります。サイン入りの本は古本屋に持っていけないので、確実に手元に残ります(笑)。
このように、私は定着のための歯止めをすごく重要視しています。先ほど、終わった後に心に残るという綺麗事を言いましたが、「心に残させる」のです。手元に残させるという意味で、本が大事です。本を使ったそういった演出が必要だと思っています。これは演出の才能ではなく、マーケティングの一環で、最後のデリバリーやプロモーションに関わる部分です。特に効果的な学ぶ方法は人によって違うのです。人から習うのか自分で学ぶのか、いくつかの方法を用意することも大切です。この最適なラーニングスタイルが人によって違うことは忘れてはなりません。ちなみに今は電子書籍の時代なので手元に残す技が難しいのが悩みです。
もう1つ人事部で印象に残ったことがあります。当時技術者が多かった私のチームメンバーは口を揃えて、「富士が言うことはよくわからない。だけど、言った通りにやると必ず成功するから不思議だ」と言っていました。営業思考と技術思考の違いでしょう。ある日、突然メンバーの1人がニコニコしながら走ってきて、「わかりました。富士さんは売りたいのですね」と言いました。その時は何を言っているのかわかりませんでした。私自身、自分のことがわかっていなかったのですね。彼は私より先に人事部に在籍していたので、研修会社が持ってきたものを選んであつらえるのが研修の仕事になっていました。実際みんなそうしていたからです。ところが私は行列ができるラーメン屋のような研修、お金を払ってでも参加したい研修をやろうとしていた。営業出身だから当たり前ですけどね。人気があって行列ができる研修を目指すというところに、私が言ったこと全てが1本線でつながっているわけです。私がうまく説明できていなかったので、相手に伝わらず、「なんで急にそんなことを言うのだろう」となっていたようです。
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インサイトナウ編集長対談
2022.08.12