前回 (https://www.insightnow.jp/article/11500) に引き続き、人材開発担当として、企業内で多くの研修を企画運営されてきた富士 翔大郎さんと、ビジネスパートナーとしてお仕事をご一緒されてきたマーケティングコンサルタントの金森努さんと鼎談(第2回目)をお届けします。記憶に残る研修を作とは、、必読です。
おまけの話ですが、山口県の代理店でこの商品の説明会をしました。説明会が終わった後、販売員の女性が私のところに来て、「具体的にどうしたら売れるでしょう?」と聞きにきたのです。なかなかそこまで積極的に取り組んでもらうのは難しいことです。私は売り方案を伝えました。その商品は最近ではクラウドと言われるストレージサービスです。2005年前後でしょうか、当時はお客様にストレージと言ってもわからないので、そこに写真(画像)をアップしてお預かりするという効用面を提案していました(写真集1冊分の利用券をキャンペーンで配布していました)。そこで売場では近くにデジカメコーナーの人がいるだろうから、一緒にキャンペーンを組んで、デジカメとのセット販売をしてみるよう助言しました。彼女は早速実施したのですが、この相互作用が成功して、驚いたことに売上全国1位になったのです。デジカメ売り場とうまく連動してデジカメもうちのサービスも売れて、まさにwin-winとなったそうです。でも、本当にすごかったのは、その程度の説明を聞いて、デジカメ売場に行って「販売協業しよう」と提案した彼女の行動力です。私の成果は彼女のような現場の営業担当一人一人の工夫と努力のおかげでもあるわけです、デリバリーの本質改善ですね。
この話には後日譚があって、その後私が異動した後に、この女性から「山口まで結婚式に来てほしい」と電話がかかってきました。説明会で一回しか会ったことがないのにそれは無いでしょと思って理由を聞くと、なんとキャンペーンを一緒に組んだデジカメ売り場の男性と結婚することになったそうで、結果的に私がキューピットだからと言われました(笑)。
猪口 彼女にとってもターニングポイントになったのでしょうね。金森さん、このお話をマーケティングの視点ではどう分析しますか。
金森 4P、商品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販売促進(Promotion)だけではなく、プロセス(Process)、人(People)、物理的環境(Physical environment)を加えて7Pと言いますが、プロセスはどれだけ段取りするかですし、ピープルは人をどれだけ巻き込んでいるか、物理的環境は環境をどれだけしっかり整備するかでさらに成果が変わってきます。マーケティング的にきちんとやられています。これだけやるのは本当に大変ですから、それだけの熱量を持っていることがまずすごいと思います。年中行事や目的化した研修をやっているのではなく、この人は熱量があるなと思った人事の方とは、だいたい長くお付き合いが続きます。長いお付き合いになれば、「今年は振り返りをしっかりやった」「来年はどこをブラッシュアップしようか」「これはブラッシュアップし尽くしたから抜本的に変えよう」となっていきます。熱量の部分は、富士さんがおっしゃった「どうやって金にするか」というところによるところも大きいと思います。つまり僕でいう「業務に活かせる」というところまで人事が考えて研修を企画しているのか、もしくは研修という行為をしているだけなのか。そこが大きく違うのだと思います。
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インサイトナウ編集長対談
2022.08.12