前回 (https://www.insightnow.jp/article/11500) に引き続き、人材開発担当として、企業内で多くの研修を企画運営されてきた富士 翔大郎さんと、ビジネスパートナーとしてお仕事をご一緒されてきたマーケティングコンサルタントの金森努さんと鼎談(第2回目)をお届けします。記憶に残る研修を作とは、、必読です。
猪口 実際に研修がビジネスプランに発展するような仕掛けもあるのですか。
富士 4年目研修の最後に発表会があり、そこで新規サービスを提案します。提案するだけではイベントになってしまうので、新規サービスを検討する権限のある部長や事業部長クラスに参加してもらい、発表の中に良いものがあればサービスとして実現できる仕組みにしました。
最終発表会はマルチエンディングシステム(研修内容や会場を可変にする)を採用して、集合研修や3ヶ月の実践期間中の取組み姿勢や活動が素晴らしかった年は発表会の会場を社内の会議室から外部のしっかりした大型のホールに変えたりします。とはいえこれもかなり我々が大変で、ホールは300人収容ですが、受講生とその上司の人数だけだと半分ほどなので空席が出てしまいます。せっかくのホールがスカスカだったら発表者は寂しいですよね。これを埋めるのが人事部の責任ですが、一般募集しても若手の研修発表会に無関係な人が簡単には集まらずどうしても余った100席を埋められませんでした。2月末の発表が迫る、1月頃のことです。打開策に悩んでいた私は当時テレビでやっていた「荒れる成人式」のニュースのなかで、荒れていない成人式の例として、東京のどこかの区が紹介されているのを見ました。この区では、受付から司会まで、すべての係を子どもたちがやっていました。子どもたちの前では暴れることはできないというこのナイスな発想に、やられたと思いました。それを見て、4年目の発表を後輩の3年目に見せようと思いつきました。そうすれば3年目社員は、来年、自分たちが何を目指すべきなのかがわかります。縦の世代間の連続性がしっかりできて、前の年の人たちとの関係性もできます。さらに、前年度の最終プレゼンを一回見ていることで、毎年発表レベルが上がっていくことになりました。
また、研修では最後にアウトプットをしますが、時間が経てば、集めたアウトプットはたいてい捨てられてしまいます。私はせっかく作った作品としてのアウトプットを捨てるのが嫌だったので、冊子にしました。それを、参考資料として次の年の研修で配布するのです。そうするとこれを参考にして考えますから、次の年にはグレードアップしていきました。数年でとてつもなくレベルが上がって、若手の研修が課長研修を超えることもあったほどです。
金森 このホールは円形劇場みたいで、そこでプレゼンする姿が格好いいのです。それに甲子園のように憧れさせるのも、仕掛けとしてうまいですよね。
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インサイトナウ編集長対談
2022.08.12