前回 (https://www.insightnow.jp/article/11500) に引き続き、人材開発担当として、企業内で多くの研修を企画運営されてきた富士 翔大郎さんと、ビジネスパートナーとしてお仕事をご一緒されてきたマーケティングコンサルタントの金森努さんと鼎談(第2回目)をお届けします。記憶に残る研修を作とは、、必読です。
最後に、定着させるために「心に残る」ものでなければいけません。私は長くビジネスをやってきた今でも過去の印象的な言葉や風景を思い出して、新たな取り組みに活かすことが多々あります。30年以上前に企画した営業研修で元ナンバーワン営業マンだった講師が言った内容やセリフのほとんどを覚えていて、今でも自戒や後輩へのアドバイスに使ったりします。研修をただの思い出にするのではなく、心の引き出しに入れて、常日頃からすぐ取り出せるものにしてもらうことで、本当の武器として活かすことができると思います。気付きだけでなくマーケティングのAIDMAを意識するということですね。
猪口 コンテンツだけではなく、仕組みとしても必要ですよね。
富士 私は人事部当時、経営サイド特に社長とも講話の内容を中心にいろいろ話をしてきました。社長とネゴっているからこそできる研修もあります。例えば、会社の大多数を占めるモチベーションが落ちがちな45歳以上のベテラン社員を漠然とした不安感から解放し、マインドとスキルをパワーアップさせてエースに変えていく研修(パワーアップ研修と命名)がありました。この研修では、ターゲット分析の結果、最新技術や横文字に無意識な抵抗感がある。また納得のいく評価が得られていない場合には、仕事や会社、上司に対してネガティブな感情も見られました。そこで「目標」や「キャリア」といったお固いビジネスワードは使わずに、「夢について考えよう」というようなライトでカジュアルなものに変換します。また、社長もターゲットに合わせて講演のやり方を根本的に変える方法を検討してくださり、受講者に確実に伝わる方法でメッセージを伝えてくれました。具体的には社長が話をした後に、「賛成」「反対」「よくわからない」の3つから選び手を挙げてもらい、反対した人とは納得するまで議論をしてから次のネタに進むというインタラクティブな方法にしてくれました。受講生の不満や納得できないことに正面から向き合ってくれたということです。このときのアンケート結果は過去最高の反響でした。社長が一方的に話すのではなく、丁寧に話を聞いてくれたというだけで感激する人もいました。企画だけでなく関係者が本気で、そして全力で取り組むことで、不満を満足へ大きく人の気持ちを動かすことができることを肌身で感じた瞬間です。
猪口 本当に重要なことだと思います。私もかつてスタッフの本当のニーズを聞いたときに分かったのは、皆参加したいということでした。上司どころか社長と納得いくまで話せたのですから、そのときの満足感がすごかったはずです。
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インサイトナウ編集長対談
2022.08.12