2022.07.08
【インサイトナウ編集長鼎談】プロフェッショナルとして、コンセプトペーパー、アクションプラン、オペレーション、すべてが必要(前編)
INSIGHT NOW! 編集部
インサイトナウ株式会社
長年、人材開発担当として、企業内で多くの研修を企画運営されてきた富士 翔大郎さんと、ビジネスパートナーとしてお仕事をご一緒されてきたマーケティングコンサルタントの金森努さんと鼎談(前編)をお届けします。特に人材開発担当の方は必読です。
金森 すごく正しいプロセスです。僕は「顧客のことは顧客に聞け」と常々言ってきています。通り一遍のネット調査など、安くて早い定量的な調査に偏りがちですが、昨今、心あるマーケッターは、顧客へのデプスインタビュー(対象者とインタビュアーが1対1の面談式で実施する、定性調査の手法の1つ)で、本音や意識下の潜在ニーズなどまで定性情報をしっかり集めています。そのとき大事なのが論点設定、ないしは課題設定をしっかりすることです。ここが曖昧だと何のためにやっているかわからず、結局形だけになってしまいます。富士さんはそこをしっかりされているのはすごいことです。
猪口 富士さんが100人いて数千億円の仕事をつくるというところから、ブレていないですよね。
富士 せめて凡人の私以上には活躍してほしい。そのためには何をしたらいいか、と思って始めました。
私が入社時から抱いている仕事のコンセプトの1つが「クレームゼロ」です。クレームを減らすのではなく、ゼロにする。研修もクレームをゼロにしたい。もっと言えばストレスをゼロにしたいと思いました。クレームとは「時期が悪い、会場が寒い、休憩が短い、周知が遅い」といったものです。アンケートだけでなくヒアリングの中で他の研修に対して出たものも含めています。
着任した年の前半は、ヒアリングをしながら、研修の視察をしました。そこで、受付に人が並んでいるのを見て、これはあり得ない、待ち時間ゼロにしようと思いました。まずは入り口で記名済みの名札を渡すことで出欠とる方式で、かなり改善しましたが、その後、運よく社員が通ると出席が自動的にカウントできるシステムを導入できました。
また、見ていて一番気になったのは、研修中にお客様から電話かかってきて、そのまま出て行く受講生がいたことです。周りの受講生の集中力を落とす危険もあります。少しでも研修に集中した状態で参加できるようにしたいので、夢中になるカリキュラムはもちろんのこと、「研修に集中したいから、その日は電話に出れないから、回さないでほしい」と職場に言ってから研修に来るような仕掛けをつくろうと思いました。そのことを念頭に置いて環境やシナリオを検討し直した結果、約3年ほどでしょうか。それからはキチンと電源も切り電話に出るために退室する人は皆無となりました。
直接、「やらないでください」「やめてください」とするのは、研修のつくり方として最も間違っていると考え避けるようにしています。よくある例ですがコンプライアンスの研修とかで最初に違反した場合の罰則や処分について話すことがありますが、「怒られるからやめなさい」というのは、育児でもそうですが、自ら考えるという自立型思考にも合わないですし、本質的な理解を奪う危険性があり研修では避けたい方法です。「こうするのが正しいから、正しいことをやりましょう」と言うのがコンプライアンスであって、「これをやったら捕まるからやめようね」と言ってしまうと正しいことをやる(判断する)という価値観やマインドが身につきません。新入社員研修でも、「社会人としてこんなことをしてはいけない」と最初に脅かすことが多く、研修はいまだに最初に脅かす設計です。これらは怒られないように仕事するといったネガティブな思考として企業や組織の文化にも影響するので注意が必要です。そうではなく、「話を聞いているうちに夢中になって、フロー状態に入って、気が付いたら研修が終わっていて、楽しく身についた」としたいのです。
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インサイトナウ編集長対談
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