「自律」とはどういう状態をいうか[1]~自己の内に羅針盤を持つ

2022.01.16

組織・人材

「自律」とはどういう状態をいうか[1]~自己の内に羅針盤を持つ

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

仕事の現場でよく口にされる「自律」。このシリーズ記事ではその「自律」がいったいどんな状態をいうのかを考えていきます。

逆にみずからの律が強く醸成されておらず曖昧な人は、接する情報や状況によって判断がまちまちで行動が安定しません。そしてそうした不安定さに耐えきれず、ついつい判断を人に頼ってしまいがちになります。つまり他律的な姿勢です。



理念や価値観が判断・行動に方向性を帯びさせる

「自律による仕事」と「他律による仕事」をさらに発展的にとらえていきましょう。両者をイメージ化したのが下のスライドです。


自律に任された仕事というのは、常にその中核に理念や価値観がしっかりとあります。そしてそれは「物事はどうあるべきか」という方向性を帯びています。その中核的価値に照らし合わせて、物事を評価、判断、行動するわけですが、「やるか/やらないか」の境界線は常にあいまいです。そして当然、やるなら「どうやるか」を自分で決めます。

それに対し、他律による仕事の典型はマニュアルで定められた仕事です。マニュアルには他者(=会社)が決めた業務ルール・業務手順がきっちり記述されています。業務を行う者はこれに則って行動することが求められます。

マニュアルで指示されていれば「やる」。指示されているやり方でやる。指示がないことは「やらない」。そのように自分が判断せずとも、「やる/やらない」の境界線ははっきり決められています。

もちろんこの2つの図は両極を示したもので、実際の仕事というのはこの2つの間のどこかになるでしょう。

1人の従業員の自律性が生んだすばらしい仕事例を1つ紹介しましょう。首都圏にある有名テーマパークのグッズショップの店員さんの行動です。それは、東日本に大地震が起こったあの2011年3月11日のときのことです。『日経ビジネス』が次の内容を報じています。


……どうでしょう、このキャストHさんのとっさの行動は見事です。このような勇敢かつ創造的な対応は、本人の内にしっかりとお客様やテーマパークを想う気持ち、信条、矜持といったものが核としてなければ生じてこないものだと私は考えます。漫然とマニュアルに頼っている人には、このような行動は決して生まれません。

「よき自律」は「我律・俺様流」ではない

さて組織の中には、働くことに対しいろいろな構えの人がいます。活動的な人もいれば非活動的な人もいる。自律的な人もいれば他律に頼る人もいる。そんな様子を図に表したのがこのスライドです。


ひとくちに活動的であるといっても、そこには「従順な活動者」と「自律の活動者」と2種類あります。前者は他律の姿です。ある方針や指示が与えられれば積極的に動きますが、それらがなければとたんに動けなくなります。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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