(評価基準を作りこめば作りこむほど、多様性は低下する。)
心理学者の河合隼雄氏は、著書「こころの処方箋」の中で、こう言っています。「自分の根っこをぐらつかせずに、他人を理解しようとするのなど、甘すぎるのである」「一般の人は人の心がすぐ分かると思っておられるが、人の心がいかに分からないかということを、確信を持って知っているのが専門家の特徴である」と。
河合氏ほどの人であっても、「他人のことは分からない」という前提に立っていることが分かります。そして、分からないからこそ、その人に期待し続けることが大事だといっています。人を分析して分かったような気になって、何か策を講じる(採用する、評価する、配属する、昇格させる)のは、“一般の人”の間違った姿勢だということでしょう。
そう考えると、今、企業が使っている「多様性」は、人間を分析・把握できるものとして扱っている(それに基づいて多様な組織にできると考えている)という点で、間違っているのではないかと感じます。人間は分析・把握できるような単純なものではなく、そもそも多様な存在です。それをわざわざ「評価基準」などを設定して評価し、基準に近づくように暗に強いていくことによって、多様性を低下させてしまっているのです。
「人を分析・把握できる」と思っている時点で、多様性の実現はまだまだ無理だろうと思わざるを得ません。
組織というもの
2017.08.04
2017.08.17
2017.09.13
2020.07.11
2020.07.31
2020.09.12
2021.11.30
2022.05.10
2022.08.04
NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。