欧州とりわけユーロ圏の経済減速懸念が明確になりつつあるのではと観測が強まっています。 5月7日、欧州委員会(European Commission)はユーロ圏各国の経済見通しを発表しました。
そんな中で優等生もいるようです。筆者が注目しているスペインの今年の経済成長率見通しは、2.1%と2%を超える高い水準を維持しているのです。
下記のグラフ(出所:欧州委員会)はスペインの過去8年と今後2年の経済成長率見通しとその中身を示しています。
スペインは2010年代前半惨憺たる経済であり、ユーロ経済のお荷物でした。不動産バブルが弾けた結果です。
当時の政権はバブル崩壊後の再建策として財政出動を大きく増やし、EUからの財政赤字規律3.0%を遵守することは出来ませんでした。しかしその後登場したサパテロ社会労働党(PSOE)政権とラホイ国民党(PP)政権が財政規律を守り緊縮財政と景気浮揚に注力した結果、観光業中心、つまりサービス業が大きく好転し2015年以降2%の上回る好景気を維持しています。
ユーロ圏全体の景気後退観測の影響がありスペインもその高い水準は維持できないものの、2%はかろうじて維持していると言えます。図の中の紫の部分の好転が大きいようで、Outputつまり経済の総産出額は2017年を境にマイナスからプラスに転じています。
また2014年には水色の個人消費部門がマイナスからプラスになってきており、観光業が大きく寄与している経済構造と言えるとおもいます。
上記地図では、ユーロ圏主要経済国では、唯一2%を上回る国として突出しています。
今月総選挙が実施され、社会労働党(PSOE)政権が引き続き政権を担うことが予想されますが、下院350議席の過半数獲得とは行かず、同じ左翼に位置するポデモス(Podemos 我々は出来るというスペイン語の意味)、そして少数地方政党と連立政権を組むでしょう。
懸念材料は今回の総選挙で極右政党VOXが初めて議席を獲得したことです。
他の欧州主要国同様にポピュリズム政党が今後どのような影響を与えるかに注目したいと思います。
経済好調そして政権安定を期待してか、スペイン10年債利回り0.96%と投資家の資金が流入する投資環境にあります。これはイタリア債10年2.60%とは対照的であり、スペインの好景気状態を強調した感が少しあります。
ユーロ圏景況感
再びユーロ圏景況感に言及します。
下記のグラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)をご覧ください。Markitという調査会社のユーロ圏全体のPMI(購買担当者への聞き取り調査)では、去年以来右肩下がりの景況感を示しています。4月51.3との結果で景気の分岐点の50は上回っていますが、その景気見通しは暗いと言えます。
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