映画『鎌倉ものがたり』と日本の移民問題

画像: 映画からの引用

2018.12.07

ライフ・ソーシャル

映画『鎌倉ものがたり』と日本の移民問題

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/縄文の時代から、日本は、渡来人も、南蛮人も、三国人も、進駐軍も、外人嫁でもなんでも、平気で受け入れ、もてなしてきた。いきりたって、外国人を入れろ、入れるな、と争うのとは、別の共生のし方があるのではないか。こんなことを考えながら、この映画を観てはどうか。/

ヨーロッパにおいて、町は教会を中心に城壁に守られ、その外は、山賊と魔女と野獣の闇の世界とされた。ところが、日本は、座敷わらしのように、妖怪が家の中まで上がり込み、これを客人としてもてなして、その逗留滞在を喜んでいた。ヤオヨロズは、中と外を区別しない。ところが、神道なるものができて、仏教や陰陽道がはやり、雲上人が八重九重の殿中に籠もって結界を作り、世情の餓鬼たちを追い払うようになる。さらには、反転して、神々妖怪を神社神域という結界、霊的な出島に押し込めてしまった。つまり、近代化は、魔物に対する鎖国化そのものだった。

とはいえ、心情的には「魔物」と大差ない外国人に関しては、縄文の時代から、日本は、渡来人も、南蛮人も、三国人も、進駐軍も、外人嫁でもなんでも、ずっと平気で受け入れ、もてなしてきた。中には、映画のように、人の戸籍を乗っ取ろう、日本人を自国に掠っていこう、などという不貞外国人もいたかもしれないが、おおよそは、こんにちは、こんにちは、世界の国から、で、なんとなくうまく受け入れてきた。これは、国境に壁を作って、銃で追い払う連中とは、国民性が大きく違う。

もちろん、いまの現実の鎌倉がうまくいっているというわけではない。だが、いきりたって、外国人を入れろ、入れるな、と争うのとは、別の共生のし方があるのではないか。こんなことを考えながら、この映画を観てはどうか。


by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka. 大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。最近の活動に 純丘先生の1分哲学、『百朝一考:第一巻・第二巻』などがある。)

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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