サービスや顧客満足の向上が絵に描いた餅になっている企業が案外多いものです。しかし最近では、サービス競争が激化し、本当の意味でサービスの価値や顧客満足を高めなければ生き残れない時代になりました。そこで今回は、お客様から高い評価を得ている企業が押さえている5つの取り組みに触れたいと思います。
サービスやCSの向上を強力に進めるための5つのポイント。前回は、サービスやCSの原点と、取り組みの目標地点について触れました。今回は早速、2つ目のポイントに触れてみたいと思います。
(2)サービスシナリオを描く
サービスや顧客満足の向上が絵に描いた餅になっていて、誰も本気で取り組めていない場合には、このサービスシナリオが極めて重要になります。
例えば「顧客満足」は以前から大切だと言っている企業は多いものです。しかし、それが建前になってしまっている企業では、こんな本音が聞こえてきます。
・お客様の手前、建前で「お客様に満足していただくことが何より大事です」と言っているだけで、CS向上が本当に事業拡大や業績といった経営貢献に強力に直結するとは思っていない・・・。
・社員は皆「お客様に喜んでいただきたい」と心から思っているけれど、CS向上のために現場で具体的にどんな努力をしたら価値があるのか分からない・・・。
これではやはり、常に目標と忙しさに追われる中で、顧客満足に本気になって取り組み、成果を出すことはできません。
そこで必要になるのがサービスシナリオです。まず大切なのが、CS向上がどのように経営貢献に強力に繋がるのかを明らかにするシナリオです。「顧客満足が向上したら、いつかいいことがあるよね」という漠然としたイメージではいけません。経営から現場までが「わが社にとって顧客満足の向上は欠かせない」と本気で思えるような具体的なシナリオを描く必要があるのです。
そして2つ目に重要なのが、CS向上を実現するために現場で取り組むべきことを具体化するシナリオです。CS向上が経営貢献に強力に繋がることが分かっても、何から手を付けたら良いのかが分からないと、結局は闇雲な取り組みになってしまって成果を出すことができません。そこで、経営貢献に直結するCS向上を実現するために、現場で明日から具体的に何に努力すると価値があるのかを明確にする必要があります。また、忙しさに負けないためには、「やること」と合わせて、「やらなくていいこと」も明確にすることも大切です。
建前の顧客満足から脱却し、本気になってCS向上に取り組むためには、経営貢献からCS向上、そして現場での価値ある努力を、強力に結びつけるシナリオを描くことが極めて有効だと思います。
さてここまでで、サービス向上や真の顧客満足の実現に向けた取り組み5つのうち2つを見てきました。満たすべき事前期待を定義して、その目標地点に向かってベクトルを揃えること。サービスやCSの向上に本気になるために、経営貢献と現場での価値ある努力とを強力に結びつけるサービスシナリオを描くこと。この2つがこれまで手薄だったとすると、ある意味で目隠しをして的を狙うようなものです。これまでに色々と一生懸命努力はしているけれども、なかなか成果が出てこなかったかもしれません。そこでこの2つに取り組むことができると、効果的な取り組みに注力することができるので、忙しさを解消しながら、大きな成果を出せるようになっていくと思います。
次回は、より具体的にサービスやCSを高めるための取り組みにも触れてみたいと思います。
service scientist's journal(サービスサイエンティストジャーナル)
2016.02.25
2016.04.22
2016.05.13
2016.06.07
2016.06.21
2016.06.28
2016.07.05
2016.07.12
2017.03.28
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新