短期的には雇用情勢が上向いていること、中長期的には労働人口が減少するという見通しといったさまざまな要因から、国内外問わず雇用の流動化が進んでいます。雇用の流動化が進むということは、企業にとっては優秀な人材を獲得する機会が増えることにつながりますが、一方で、自社の優秀な人材が流出しかねないことも意味します。そこで近年、注目されている人事施策が「リテンション・マネジメント」です。
『ウォー・フォー・タレント』が予見した、人材育成競争の時代
“ウォー・フォー・タレント”と聞くと、「人材の獲得競争である」ととらえてしまいがちですが、人事の名著として知られる『ウォー・フォー・タレント』では、人材獲得と同等に人材育成も重要であることを説いています。
人材育成競争は戦略上の転換点であるという事実を、多くの企業が見逃している。これは今後のビジネスシーンを決定するほどの影響力を持つ。(中略)人材育成競争はすべての企業にとって大きな課題ではあるが、早い時期から積極的に取り組めば、競争での優位性を獲得する大きなチャンスにもなりうる。
このように、今後も企業が持続的に成長していくためには「人材の獲得」だけでなく、「人材の育成」にも積極的に取り組まなければならないのです。
常に学び、自己成長を促す機会を創出する企業文化を作る
知識創造型人材は常に学び、自己成長を促す機会や専門能力を高める機会を求めています。個に焦点を当ててリテンション・マネジメントについて考えるとき、知識創造型人材に難易度の高い仕事を与えることや、自己成長を促す人材育成システムが機能していることが、彼らを自社に引きつけて流出させない魅力的なインセンティブになります。人材の獲得、育成競争を勝ち抜くために、グローバル企業では知識創造型人材に選ばれる仕組みの構築を行っているのです。
日本企業の人事部門がこれからのリテンション・マネジメントについて考えるとき、これまでのように組織寄りの視点で制度の構築やその運用を行うだけでなく、働く個人、とくに知識創造型人材に焦点を当てることが重要です。個人の成長や能力向上に寄与する仕事を創造する企業文化を創ること、そして人材育成システムを構築することが、今後より重要となるのです。
初出『HRトレンドハンドブック』(HR総研)
須東朋広(インテリジェンスHITO総合研究所 主席研究員/HR総研 客員研究員)
編集:高梨茂(HRレビュー編集部)
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人材育成
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