面接の質を高めるために人事担当者が取り組むべきこととは? 連載「ダメ面接官の10の習慣」では、ダメな面接官に共通する特徴を取り上げながら、面接の質を向上させ、採用力を高めるためのノウハウをお伝えします。第2回のテーマは「ダメ面接官は候補者に一貫性を求めすぎる」です。
「ノリが良い人」のほうが“良い”キャリアを歩んでいるという事実
また、一般的に“良い”とされるキャリアを歩むにはキャリアに対してどのような姿勢が必要かを示すさまざまな研究も、キャリアの一貫性を重視すべきかどうかの判断の参考になります。
たとえば、人事の世界では有名な理論の一つ、スタンフォード大学のクランボルツ教授による「計画された偶発性理論」(planned happenstance theory)。この理論は、実際に“良い”とされるキャリアを歩んできたビジネスパーソンを調査してわかった「事実」です。クランボルツ教授が実施した調査によると、18歳のときに考えていた職業に実際に就いている人は全体の約2%にすぎませんでした。また、個人のキャリアの8割は予想しない偶発的な事象によって決定されるとも述べています。一連の研究結果からクランボルツ教授は、「やりたい仕事に固執するよりも、むしろ判断を保留してオープンマインドであるべきだ」と主張しています。
クランボルツ教授は「計画された偶発性理論」を実践するキーワードを5つ挙げています。
好奇心
自分の思い込みにとらわれず、さまざまなことに関心を持つ
持続性
一度始めたことは、ある程度結果が出るまで粘り強く取り組む(≠忍耐)
楽観性
ピンチをチャンスと捉え、失敗にもくじけない
柔軟性
チャンスと思えば乗り、ダメならきっぱり方向転換する
冒険心
安全より、リスクを負ってでも積極的に挑戦する
上記のキーワードの解説は私の解釈です。私はこれらをまとめて「ノリが良い人」と表現しています。
こうした理論を前にすると、あまりにキャリアに一貫性のある人は、逆に「もしかしてチャンスを逃してきた(これからも逃す)人なのでは」とさえ思えてきます。さすがにそれは言いすぎかもしれませんが、一貫性がないからといってダメと言い切れない一つの根拠とならないでしょうか。
面接官は「認知的不協和」に耐え、「想像力」や「意味づけ力」を鍛える
人は個人の持つ情報(認知)の間に矛盾が生じると不快感を覚えます。これを心理学では「認知的不協和」と言い、人はできるだけその不快感を減らそうとします。ですから、面接で一貫性のないキャリアの話を聞いて、「一貫性がないからダメなんだ」と即断したくなるのも無理はありません。しかし、ここまで述べてきたように、即断するのは早計です。
人生やキャリアはとても複雑で、当人であってもこれまでのキャリアがどのような意味を持つのか、すぐにはわからないものです。ましてや他人が理解するのは困難で、スキル不足の面接官にはわからなくて当然です。しかし、人の人生に少なからぬ影響を与える面接官たるもの、「認知的不協和」がもたらす不快感に負けて軽率な評価を行ってはなりません。
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