相見積至上主義の弊害

2018.04.18

経営・マネジメント

相見積至上主義の弊害

野町 直弘
調達購買コンサルタント

先日東京都の入札監視委員会が都が試行している「1者入札の中止」について再考を促しました。入札自体が目的化してしまうと却って弊害がでてしまいますが、そもそも何故1者入札になってしまうのでしょうか?その理由を推察して対策案を考えてみます。

最後は価格(予定価格)の問題です。東京都の場合は従来予定価格を事前に公開していましたから、予定価格が低すぎるとサプライヤが入札しない(できない)というケースが発生します。こういう場合、サプライヤは予定価格を参照して安値での受注をさけるために入札しないのです。
これが1者入札につながります。

このような4つの要因の中でどの理由が真因なのか、などの分析がなされていないので、はっきりしたことは言えませんが、1点目や2点目の前者の理由はレアケースでしょう。

2点目の仕様に関しては後者の代替性や互換性のない仕様になってしまっている、ということが多くの原因として考えられます。また今今の状況であれば、工期や稼働の問題、価格の問題が主因と考えられます。

3点目、4点目の工期や稼働の問題、価格の問題はマーケットマターです。稼働についてはサプライヤは収益性の高い案件に優先的に稼働を振り分けたがりますから、つきつめると価格にリンクします。

本来入札という手法はマーケットメカニズムを活用するものですから入札の結果は現時点での市場価格であると言えます。もし仕様や技術的な問題がなく1者入札もしくは入札がない場合は、そもそもその案件に魅力がないからです。つまり予定価格そのものに問題があると考えられます。

一方で仕様の後者の問題に関しては入札方法の改善が対策になるでしょう。民間で行われているRFP(提案依頼)のように、仕様の緩和や代替仕様の提案を求めていくやり方です。公共調達ではこういう手法を採用することは中々難しいでしょうが、国民が求めているのは入札を実施することではなく「適正な競争によって、適正な事業者に適正な金額で契約が行われていること」であり、これは公共も民間も全く変わらないのです。

民間では入札という形式ではなく「相見積」という方法で複数のサプライヤから見積を取り比較をするというのが殆どの企業でルール化されています。

一方で「入札」でも「相見積」でも、最も怖いのは「むりやり相見積」や「やらせ入札」です。比較することを目的にして実力もない会社に「入札」や「見積」を出させて、対外的には「入札」「相見積」させているからいいでしょ(問題ないでしょ)、と思考停止になることが最もあってはならないことなのです。一般的にはこういう手法を「当て馬」と言います。
「当て馬」は入札価格(見積価格)の適正性を損ない、しいてはサプライヤとの信頼関係を損なうことにもつながります。

従来の公共入札は入札案件を公開すれば複数の参加者が入札する(仕事を受注したがる)、という買い手の論理に基づく手法です。それが最近は成り立たなくなっているのでしょう。肝心
なのは、目的を明確にした上で、どういう制度見直しが必要かという本質的な視点を持ち改革を進めていくことでしょう。これは公共も民間も変わらないことです。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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