アメリカで「スモール・ジャイアンツ」とよばれる「小さくても偉大な企業」。それらの企業との交流を通して学んだことは「偉大さ」とは規模(売上・頭数)ではなく、肝心なのは市場シェアではなくお客様の心のシェア(マインドシェア)であるということ。
3)「スモール・ジャイアンツ」はコア・バリュー(共通の価値観)を大切にする
今まで、何十という「スモール・ジャイアンツ」の事例を見てきて明らかなのは、そのいずれも、「会社が大事にしたい価値観」を掲げ、社員が一丸となってその価値観を守り、日々の意思決定や行動の基盤としていることです。
会社が「コア・バリュー」を掲げ、それを実践するといったい何が起こるでしょう。
まず、会社の結束が固くなります。「会社として何が大事か」が統一され、共通理解されているため、判断のブレやすれ違いが起こりにくくなります。また、働く人同士の信頼も高まり、なあなあではなく、心から「仲の良い会社」ができます。
そして、会社で働く人たちの一人ひとりが、自分の能力や創意工夫を発揮し、伸び伸びと自由に働いて成果を出せるようになります。近年、「権限委譲」ということが盛んに言われていますが、たとえばサービスの現場で「働く人にすべてを委ねる」というのは現実的には決して簡単なことではなく、経営者にとっては怖いことでもあります。
というのも、「皆さん、今日から、自分で考えて判断して、行動してください」といったところで、個々人が会社が望むような結果を出してくれるかどうかは確証が持てないからです。だから、一般のサービスの現場では、「ルール」や「マニュアル」をもってしてサービスの成果を「均一化」しようとします。その結果、紋切り型な対応となり、顧客の「人間性」を無視した血の通わないサービスになってしまうのです。
「コア・バリュー(価値観)」を統一することにより、働く人はその基盤の上で自分の創造力を働かせて自由にプレイすることができます。その結果、顧客の「人間」と向き合う、血の通った、嬉しいサプライズいっぱいの、心に触れる感動のサービスが生まれるのです。
サービスの現場を例に挙げてきましたが、同じことは、営業職にも、あるいは商品開発の現場にも、経理や法務といった支援部門にもいえると思います。
「スモール・ジャイアンツから学んだこと」として三つを取り上げて書いてきましたが、スモール・ジャイアンツが提示してくれる経営のヒントはまだまだたくさんあります。これからも、アメリカの「スモール・ジャイアンツ」ばかりではなく、日本の「スモール・ジャイアンツ」からも大いに学んで、日本流スモール・ジャイアンツの活躍を世界に発信していきたいものです。
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ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。