開発購買は何故上手くいかないのか?シリーズの2回目です。前回述べた開発購買推進上の課題に対して比較的上手くいっている2つの事例について触れています。それらに共通することは何でしょうか?
多くの自動車メーカーのバイヤーはこのような設計開発部門とのコミュニケーションに力を入れています。何故でしょうか。それは「新製品開発の段階でしかコストが大幅に下がることはない」と知っているからです。日々原価低減活動などをやっていて私もこの制約を実感していました。
こういう制約を感じていたから自ら進んで開発上流段階に入り込んでいくのです。このように多かれ少なかれバイヤーがこのような開発購買的活動をすることはあたり前だったのです。このようなやり方が定着していれば冒頭の2つのギャップは生じません。しかし、このやり方は属人的な開発購買のやり方と言えるでしょう。
次はある企業事例です。この企業は開発担当役員が購買担当役員を兼務することをきっかけにして開発部門と購買部門を同じ部署にしました。この企業の業界は製品開発と素材開発が分かれており、同じ部署になったのは素材開発と購買部門だったのです。従来は使用原料も偏りがあり、製品開発が一度使用原料を決めてしまうと中々代替原料を活用することは難しかったのが実態でした。
それに対して素材開発と購買部門が同じ部署にしたことで原料選定に関する社内での力も強まり、調達性やコストなどを考慮した原料採用が進んだのです。
当初は同じ部署でも開発と購買は異なるチームでスタートしました。その後開発・購買担当者が2人でセットになり開発購買的活動を進めていったようです。今では開発も購買も同じ人がやる、という機能進化をしているようです。いずれにしても前述した2つのギャップを取り払うための仕組みを上手く作っていると言えます。
今回は開発購買が比較的上手く進んでいる事例について取り上げてきましたが、ここに共通するのは「主語を作る」ということです。自動車業界の事例は購買部門が属人的ではありますがその役割を担っています。二つ目のケースは同じ部署となった開発購買部門がその役割を担っています。
このように如何に活動の主体となる組織、人員を生み出していくかが、開発購買を推進していく上で重要であることが分かっていただけたのではないでしょうか。
次回は開発購買の進化についてトヨタ自動車の原価企画活動についてとりあげていきます。
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2018.02.07
2009.02.10
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。