「働き方改革」が閣議決定されてから、毎日のようにメディアや人事系を中心に賑わせ、今の働き方ではダメだと言わんばかりの勢いで語られている。 現在言われているような「働き方改革」で、生産性はどのように向上するのだろうか。
当然多くの経営者は、多様なスキルを持った労働力はほしいし、新しい人材を常に求めている。
「売り」と「労働量」のバランス
ほとんどの経営者は、クライアントやユーザーの獲得に腐心している。顧客から高い評価を得るにはどうすればいいかを常に考え組織をつくっている。売上や利益に直結する顧客の評価は、その企業が打ち出す成果のクオリティにほかならないのだが、言い方を変えれば、「売り」に苦労しているのだ。
働き方改革によって、「売り」につながる、組織の生み出す成果のクオリティは上がるのだろうか。
経営者であれば、誰でも生産性をあげたいと思っている。休日を増やすことでアウトプットが増えるのであれば確実にやるだろう。賃金をあげればアウトプットが増えるのであれば賃金を増やすだろう。
しかし、そうした制度の変更のみでは、より効果的な戦略にも個人の能力向上にもなかなかつながりにくいことは特に中小企業の経営者であれば身に染みているはずだ。
もちろん、報酬制度や労働環境・条件が個人のモチベーションを高め、生産性を向上させる要因のひとつであることは間違いのないことではあるが、生産性をあげるもっと大きな要因は、適切な戦略(設備投資含む)、労働者一人ひとりの能力と実行力の高さである。つまり現在のバリューチェーンを改善していくしかない。
バリューチェーンにどうつなげるか
国が推奨する長時間労働の解消や多様な労働環境の提供にしても、人材としての能力アップには時間がかかることを考えれば、戦略の再構築や優れたアウトプットを生むバリューチェーンを築かなければ、生産性を一変させることはできない。
労働生産性の定義だけ見れば、アウトプットとしての成果を最大化するには、同じ労働量のクオリティをあげれば良いということになるのだが、働き方だけを変えれば、分子である「売上」や「利益」とのバランスを改善してくれるとは、残念ながら経営者は考えていない。
国の働き方改革に乗じて、様々なサービスも生まれている。在宅ワークを増やす、ITネットワーク環境を整える、シェアオフィスを活用する、アルバイトや非正規雇用者の条件を改善する、手段としては様々なことがあるだろう。しかし、環境整備、再教育、マインドの醸成など、どれもコストのかかることばかりだ。
仮に、一部の社員で成功し、個人の生産性が高まったとする、しかし分子の顧客開拓がうまくできなかった場合は、一部の社員は不要ということになる。より少ない社員でバリューチェーンが回ることになるのだから経営者としてはこれほど望ましいことはない。
その場合、余剰のスタッフを解雇すればいいのだろうか。それが一億総活躍とは言わないだろう。むしろ、「一億総競争」だ。
とはいえ、多くの中小企業、中江も小規模企業においては、あまり触れたくなかった問題であり、今後取り組まなければならない問題であることは間違いないことだ。
経営者は、「売り」と「労働量」のバランス双方を高めるために、一日も休まる日はないようだ。
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