2008.02.14
カーライル・グループの投資戦略とPE市場の展望
猪熊 篤史
2007年12月に開催したIBSファイナンス研究会におけるカーライル・グループ安達代表の講演の要旨をご紹介いたします。
投資事例2: ウィルコム(DDIポケット)
KDDIのコア事業であるauと(携帯事業)の競合によってウィルコムのPHS事業は親会社の事業において利益相反を起こしていた。成長に向けての経営資源投入が困難な状況にあった。カーラールのテレコムグループには通信業界における経験豊かな人材が多い。彼らの協力も得て現経営陣とともにウィルコムのMBOを実行した。PHSは、マイクロセルシステムを基盤としている。これはトラフィックの多い地域にも高品質のサービスを提供できる強みを持っている。全国に16万の基地局を持つことは大変な資産であり、重大な参入障壁となる。
カーライルは米国、日本、アジアのファンドからウィルコムに共同投資を行った。投資額600億円のうち360億をカーライルが出資している。京セラ(30% )とKDDI(10% )も出資している。元ネクステル社CEOとして経営再建を果たしたアーカーソン氏と元ベライゾンの副社長のアットウッド氏がカーライルからウィルコムの非常勤取締役に就任している。2005年2月にDDIポケットからウィルコムに社名を変更した。2900円の定額音声通話サービスを業界に先駆けて2005年に導入した。シャープ、マイクロソフトとスマートフォンを共同開発して2005年12月にWZERO3を発売した。データ通信速度の高速化を実現した。また、非公開LBO企業として初めて7年普通社債を発行して350億円を調達するなど、財務体質の安定化を実施している。加入者数、売上ともに順調に拡大しているが、携帯電話との競争が激化する中でPHS事業の更なる拡大をいかに実現するかを現在考えているところである。
○ 敵対的買収をせずに既存の経営陣を最大限尊重すること、人員削減による収益改善ではなく事業成長を重視していること、エクジット後の投資先企業の持続成長を重視していることなど、中長期的な視点で、投資先はもちろん、業界や社会と良好な関係を維持・構築することに注意を払ってカーライル・グループが投資を行っていることが安達代表の講演から伝わってきました。
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