カーライル・グループの投資戦略とPE市場の展望

2007年12月に開催したIBSファイナンス研究会におけるカーライル・グループ安達代表の講演の要旨をご紹介いたします。

 日本のバイアウト市場は2000年以降増加傾向にあり2006年には80件のバイアウト投資があった。2007年上期は前年並みのペースであるが、規模は小さくなっている。少ない案件に対して多くのファンドが入札に参加するため競争が激しくなっている。

 市場環境としてはバイアウトの認知度が向上していて経営の選択肢としてのバイアウトの位置づけは向上している。2007年におけるバイアウト投資のエクジットは良好だった。サブプライムローン問題があっても日本においては負債の活用は比較的容易であった。一方で、アクティビストファンドが注目を集めるなどファンドに対するネガティブな感情がある。また。景気の好転によって企業リストラが減速して経営改善に対する意識が低下していること、MBOに対する一部の誤解などがネガティブな要因として指摘できる。

 バイアウト投資においては、投資実行前に経営陣と十分話し合い成長のストーリーを作って、その上でガバナンスを利かせることが成功のポイントとなる。

投資事例1: キトー

 カーライル・グループの投資実績としてキトーなどがある。キトーは、ホイスト/クレーン機器を開発・製造・販売している。国内シェア50%超の優良企業である。創業家の鬼頭家が代々経営権を掌握している。1980年に株式公開したが、2003年9月に創業家とカーライフでMBOした。従業員1280名、売上は約320億円(2007年3月期)。

 当時は国内事業の頭打ち、不採算事業の存在などによる業績の停滞、グローバル展開の行き詰まりという状況にあった。米国事業や中国のジョイント・ベンチャーにおいてガバナンス体制・経営体制の改善余地もあった。こうした背景のもと、キトーは海外の競合他社などから一部出資を受け入れることを検討していた。

 投資後、取締役5名のうちカーライルから3名を非常勤取締役として派遣した。従業員持ち株制度、ストックオプション制度、業績連動型報酬制度を導入した。米国子会社において新CEOを外部から招聘して事業を再構築した。中国におけるマイノリティ投資先を子会社化するなど中国事業を強化した。

 人員削減はしていない。MBO時の2002年度のコア事業の売上高163億円は2006年度には318億円、経常利益は7億円から45億円に伸びた。キトーは再上場を通して株式市場へのアクセスを得るとともに、社会信用・知名度の更なる向上をはかり、真のグローバルNo.1ホイストメーカーを目指している。

次のページ投資事例2: ウィルコム(DDIポケット)

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