携帯メーカーは、何社生き残れるか?

2008.02.05

経営・マネジメント

携帯メーカーは、何社生き残れるか?

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

世界第三位の携帯メーカー・モトローラが携帯事業を切り離す。中国では国産メーカートップのレノボが携帯事業から撤退。日本の携帯メーカーは今後、何社生き残れるだろうか。

10年前、一部のアナリスト達は「この先10年ぐらいで、百貨店業界は
4社ぐらいにまで集約が進む」と業界の将来像を分析していた。当時は
まだ大手百貨店が10社以上あり、それぞれに覇を競っていた時代だ。
そんなレポートを読んでも、ホントかなぐらいにしか思えなかった指摘
が10年経ったいまでは現実のものとなっている。

当時のレポートの根拠としてどう書かれていたのか。細部までは覚えて
いないが、大筋は次のような話だったと思う。すなわち日本は今後、人
口減少社会になる。従って、まず全体的な市場規模そのものが縮んで行
く。加えて、消費の成熟化によりこれまで百貨店で売られてきた商品の
コモディティ化が進む。一方では消費の二極分化により高額品は別の
チャンネルで売れるようになる。まとめれば百貨店がこれまで日本の流
通の中で担ってきた役割がなくなり、存在価値が失われるのだと。

まさに、その通りのことが起こったわけだ。

携帯電話業界に百貨店業界に起こったのとまったく同じ流れが押し寄せ
るとは思わない。しかし、少なくとも国内の携帯電話端末市場は完全に
飽和状態にある。メーカー各社は今のところ、極めてニッチな領域での
差異化に全力投球しているようだが、それがいつまでもユーザーニーズ
にフィットし続けるとはどうしても思えない。

今後の携帯電話はおそらく、パソコンがたどったのと同じ道筋を歩んで
いくのではないだろうか。すなわち、ある臨界点を超えた時点から恐ろ
しいまでのコモディティ化が進む。およそ備えるべき機能がほぼ満たさ
れたポイントで起こるのは急激な価格競争だろう。そこでは規模の論理
しか通用しない。

現時点でのノキアの年間販売台数が世界で約4億4000万台、これに対
して日本勢は最大手とされるNECやパナソニックの全盛期でさえ2000
万台に過ぎない。勝負は見えているではないか。しかも今年中にはほぼ
間違いなく従来の日本型携帯ビジネスモデルに風穴を開けるiPhoneが
上陸し、引き続いておそらくはgPhoneもやってくる。

そのとき日本の携帯電話メーカーが何社生き残れるのか。もちろん携帯
電話メーカー各社にとっては、こうした状況は読みのうちに入っている
はずだ。未来予測が必要なのは大手メーカーではなく、携帯電話関連で
事業を営んでいるパーツメーカー(の経営陣)である。

経営者に何より必要なのは、自分なりにこうした未来予測図を常に描き
続けること。その参考事例を、自分の業界内ではなく、他の業界に起
こったことに求め、そこから知恵を育む。そのような努力を積み重ねる
姿勢が必須条件なのだと思う。

※参考資料
日本経済新聞2008年1/29・1/31・2/1・2/2

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