集中購買を進めているのに何故サプライヤ集約が進まないのか、サプライヤ集約を進めているのに中々すすまないのは何故なのか、集中購買やサプライヤ集約を進めているにも関わらずコスト削減が進まないのは何故かなのでしょうか?そもそも改革の目的が不明確であったり、目的と手段が入れ替わったりしていることが指摘されます。
このように集中購買もサプライヤ集約もボリュームメリットを活かしてコスト削減を実現しましょう、というのが目的になります。しかし、このボリュームメリットというのがクセモノなのです。ここでは、このボリュームメリットについてもうちょっと深く考えてみましょう。
ボリュームメリットとは要するに多く買うことでコスト削減を実現しましょう、ということですが、例えば全く同じモノをたくさん購入(生産)すればサプライヤの生産コストは下がります。しかし、これは金型などを仕様・図面に基づき製作するカスタマイズ品に関して言えることです。金型などの準固定費は生産量が増えれば増える程1個当たりのコストは薄まります。また生産効率も習熟されるため、生産コストも下がるでしょう。一方で汎用品はどうでしょうか。汎用品は生産規模によります。現状の生産規模が100あってそれがある一社のボリュームが増えることで110になればコストは下がるでしょう。しかし100から101になったとしても殆どコストは下がりません。
違うモノでも作り方が同じようなカスタム品(例えばプラスチック射出成形品)などは生産コストの大きい部分を設備加工費が占めるので、総生産量が増えれば設備の稼働率が高まりその分コストは下がりやすくなります。
このように購入するモノの種類や作り方によって、また個別企業の工場や設備の稼働状況によってもボリュームメリットが出て生産コストが下がるモノとそうでないモノがあるのです。
そうは言っても沢山買うと言えば安くしてくれるだろう、というご意見もあると思いますが、それはそれで理由があります。この場合、サプライヤ集約などがいい例になりますが、ある品目(群)の取引サプライヤを10社から5社にしますと1社当たりの売上は平均2倍になります。これらのサプライヤがこのバイヤー企業に対する売上依存度が高ければ高いほどサプライヤ企業の売上高の増加率は高くなります。売上が増加するということは固定費が増えなければ売上から変動費を指しひいたものが収益の増加です。
あくまでも固定費が増えなければですが、この場合、サプライヤの集約などによる売上の増加でサプライヤの収益が向上します。この場合にはサプライヤの販売価格を値下げしてくれという交渉が成りたちます。
しかし気をつけなければならないのは、このケースはあくまでもサプライヤの収益を買い手企業に還元してください、ということであり、純粋に生産コストが下がっている訳ではないということ。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
調達購買改革を巡る誤解
2016.08.29
2016.09.07
2016.09.23
2016.10.05
2016.10.19
2016.11.02
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。