大塚家具を舞台にした「第一幕」、そして別々の会社として競う「第二幕」。いずれにおいても世間に溢れる「親子喧嘩」や「事業承継の失敗」といった見方は皮相に過ぎる。今や完全に別路線を歩もうとしている2人の経営者が率いる別々の「大塚」は、実は競合すらしていない。
小生も先の記事で指摘したように、これほど大胆な方針転換をすれば元々持つ自らの強みを十分生かせず、しかもすぐには社員がついてこれず、混乱が生じるのは理の当然だ。しかも当面の競争相手は(本来はバッティングしないはずの)低価格路線で名を馳せるイケアであり、ニトリなのだ。当面の苦戦は必然的な生みの苦しみであり、久美子氏には実は想定内のはずだ。
販売員が「新しい接客法に慣れていない」ため、戸惑っているという現実は大塚家具自身が認めている。ぴったりと客に寄り添う従来の接客スタイルから、まずは自由に見てもらうためにタイミングを見て客に声を掛けるというのは(ファッション店等では当たり前といえど)意外と難しいものだ。冷やかしだけの客と、本当に買う気で品定めしている客の見極めも必要だ。
それに久美子氏の方針転換に反発して勝久氏の下に走った、己の販売スキルに自信がある優秀な販売員が抜けた影響も小さくないはずだ。大塚家具の広報アナウンスでは決して触れられない側面だが、久美子氏には痛手だったろうし、勝久氏には「してやったり」だろう。
こう考えると、この2人の経営者は、確かに骨肉の争いの恰好ではあるが、互いの戦略方針の正しさを証明するため、そして己のプライドを賭けて闘っているのである。そして冷静に言ってしまえば、大塚家具と匠大塚の2社は全く違う客層を相手にしようとしているゆえ、もはや「競合」でも何でもないのだ。【追記】(2016年7月19日)
売上低迷の原因のひとつを「客単価が低迷している」としたことは情報不足に基づく当方の誤解でしたので、記事における当該部分を修正しております。大塚家具の広報室によりますと、「客単価は2015年比、2014年比でみても微減程度」「業績不振の要因(内的要因)としては、新たな顧客対応オペ レーションに順応しきれておらず成約件数が落ち込んでいること」だそうです。
また、記事中の「一般大衆路線」が「大塚家具は低価格品重視にシフトした」という意味に取られるとしたら、それは誤解です。その誤解を避けるため、本文の「一般大衆路線」のあとに(決して「低価格品路線」ではない)と挿入しました。
小生の理解では、大塚家具では高価格帯から中価格帯にかけてのゾーン、つまりIKEAやニトリといった低価格帯中心の店に比べたら相当上の価格帯を中核とされています。それに大塚家具の強みは昔も今も接客による説明力・相談力です。各商品の違いを丁寧に説明し、納得して家具という高額の商品を買い上げてもらえる力です。決してセルフサービスで商品を買い物かごに入れてもらおうとするやり方ではありません。
経営・事業戦略
2013.12.20
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。 ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/ ✅中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。https://www.facebook.com/rashimbanclub/
