「為せば成る、為さねば成らぬ何事も」とは、上杉鷹山が家臣に与えた家訓である。正確にはこの後に「成らぬは人の為さぬなりけり」と続く。この言葉は、できそうもないことでも、その気になってやり通せばできることと解釈される。本当に、できるようになるのだろうか。
1日3時間で10年間
羽生善治氏は幼いころから、1日3時間集中して将棋に取り組んだという。それを10年続けた。将棋の世界でプロになるためには、最低限これぐらいの努力が必要だという。
1日3時間を10年間続けると、どうなるか。単純計算でざっと10,950時間ほどになる。要するにこれは「1万時間の法則」である。
空手の世界では「千日の稽古を持って初診とし、万日の稽古をもって極とす」という言葉がある。千日稽古を続けてようやく入り口に立ち、一万日続けると極みに達する。一万日といえば30年。気の長くなるような話ではある。
筆者も一応、黒帯をいただいた。空手を始めたのが40歳の時で、昇段審査に合格したときには48歳になっていた。この8年間に、1回2時間の道場稽古に平均して週2回通った。年間40週ぐらい稽古したとして合計1280時間、一応「初心」ぐらいにはなったのかもしれない。
正しいやり方でやる
空手をやり始めた頃は、体がカチンコチンに硬かった。回し蹴りで上段(相手の顔ぐらいの高さ)を蹴るためには、股関節が柔らかくないといけない。体が固まったままで、無理に力を入れて動かすとケガをする恐れもある。
だから、稽古を始める前には、しっかり柔軟体操をしておくようにと指示された。要するにお相撲さんの股割りである。両足をできるだけ左右にペタンと開いたのち、上体を床に倒していく。最低でもおでこがつくぐらいに柔らかくしてください、と教わった。
が、できません。腕を前に伸ばしてみて、手のひらさえ床には届かない。開いた足だって、膝のあたりが浮いている。ところが、師範代の方は、ジーンズがはちきれそうなぐらいのごつい太ももをしていながら、ペタンパタンと両足はほぼ180度に開き、前に倒した体の胸が床についている。
なぜ、できるのか。もともと、体が柔らかいのか。これが生まれ持った素質というものかと思いきや、違うという。この方も最初はできなかった。けれども、やり続けている内にできるようになったそうだ。
だから、歳だからと諦めず続けてください。お風呂あがりにやると効果的です。ただし、正しいやり方でやらないと、意味がありません。といって教えてくれたコツが、お尻の骨盤を後傾させないこと。床にしっかりお尻をつけたら、そこからの立ち上がりが垂直でなければならないそうだ。最初のうちは壁際で、お尻を壁くっつけるようにしてやると良い、と教わった。
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2015.07.17
2009.10.31