女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)が、平成28年4月1日に施行されますが、企業は具体的に何から手をつけるべきか。 同法の概要と成立の背景と、すでに女性の働き方改革に取り組んでいる企業のケースをご紹介しながら、各企業の担当者が取るべき施策のヒントを探ります。
働く女性に対する支援は、従来は育児をしながら働くことを可能にするためのいわゆる「両立支援」が中心。育休制度や時短制度の導入など、特定期の女性をターゲットにした制度を中心に強化を図ってきました。ところが、制度の普及が進むにつれ労働条件に制約のある女性社員が増加し、他の社員にタスクが集中。企業内で労働力不足が発生し、社員全体のモチベーションが低下しました。この状況が育休・時短制度の活用を困難なものとし、かえって女性の離職率増加を招く結果に。労働人口が減少するなか人材獲得に知恵をしぼる企業にとって、悩みの種となっていました。
女性活躍推進法は、このような状況を踏まえて「特定期の女性」だけを対象とした支援から、「男女共通」で働き方改革を促す方向にかじを切ったと評価できます。同法が企業に報告を求める4つの基礎評価項目のなかに法定時間外労働や法定休日労働時間の状況が含まれることが象徴しているように、「全社員」の働き方について企業に改革を迫るものなのです。
さらに、女性の活躍状況について、Webなどでの公開を義務づけたことも大きなポイントです。公開された情報は求職者が企業を選択する際の重要な指標になります。女性が活躍しやすい環境であることが企業のブランド価値を左右し、優秀な人材の確保や企業の競争力にも関わると考えられます。
名称から「女性」だけが対象のようにも思われる「女性活躍推進法」。実は男女を問わず、働き方をめぐる企業イメージや採用ブランディングに関わる問題でもあるのです。
日清食品・東急リバブル・サイボウズ-女性が活躍する企業の施策から学ぶ
では、具体的にどのような手を打てるでしょうか。
女性活躍推進法が定める各企業が把握すべき基礎項目は、「採用者に占める女性の割合」「男女の平均継続勤務年数の差異」「管理職に占める女性労働者の割合」など。各項目とも、短期的に数字を上昇させるのは難しい項目ばかりです。すでにダイバーシティ(人材の多様化)対策で実績を挙げている企業の事例がヒントになるのではないでしょうか。
ケース1:日清食品ホールディングス株式会社~全社的な意識改革施策の実行、社員の声を集めた動画で経営陣にプレゼン~
Before
・女性管理職比率は0%(2008年)
・グローバルな事業展開に向け、世界レベルのダイバーシティ実現が望まれる
対策
・社内有志による「ダイバーシティ委員会」の設置
・「シスター制度」、ダイバーシティ講演、認定やアワードへの応募
・女性社員の声を集めた動画を使い、経営陣にプレゼンテーション
After
・女性管理職比率が3.9%に(2015年)
・女性活躍推進をきっかけに女性や外国人など多様な人材が活躍できる風土づくりの意識が社員に浸透
グローバルに事業を展開している日清食品ですが、2008年時点の女性管理職比率は0%。世界基準のダイバーシティを達成しようと、2015年5月に「ダイバーシティ委員会」を設置しました。
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