昨今騒がれている新国立競技場のデザインコンペやデザイン見直しを通じてサプライヤの立場からみたコンペのあり方を語ってみます。
昨今リバースオークションを公共入札で活用する機会が増えているようですが、確かにオークションは公平かつ透明性が確保されるツールです。一方で透明性が確保されてしまうため買い手が何らかの意思をそこに挟むことができなくなります。サプライヤは自分が最安値かどうかわかりますし、他社がいくらで入札したかもわかります。ですから落札したサプライヤーを採用できないケースがおきた場合は最悪です。
リバースオークションが日本企業に導入され始めた2002年くらいのことですが、ある企業でオークションを大規模に使い安価入札を得たものの、その後、品質実験等を行った結果8割方の案件で採用ができなかっという話はとても有名です。このケースでは事前に開発部門との調整やサプライヤーの審査が不足していたことが、採用に至らない理由としてあげられていましたが、このようなケースが起こるとサプライヤーは二度とこの企業のオークションに進んで参加しようとは思わないでしょう。このように透明性が確保されればされるほど小細工は禁じ手になってしまうのです。
ある先進企業ではこのような問題に対して交渉時にやるべきこと、やってはいけないことをルールとして決めて全バイヤーに教育し徹底させています。当て馬や指値などはもちろんやってはいけない行為としてルール化しているのです。
このようにしっかりした手順を踏んだコンペや入札、相見積りなどの競合は、徹底されていればサプライヤ側からしても公平な競争機会を作り出すことにつながるのでサプライヤにとって"嫌なこと"とは限らないのです。
コンペや競合、入札に関してもう一点バイヤーに理解して欲しいことがあります。それは見積りも提案もお金がかかるということです。今回の競技場の件でも工事施工を行う建設会社や設計会社が総工費を引き上げていると非難する声がありますが、契約や施工に入れなくても人は確保している筈です。デザインの見直し等の調整に時間がかかればかかるほどコストはかかっているのです。
案件によっては最初の引き合いから決定、購買(実行)まで数ヶ月かかるケースも少なくありません。コンサルティング支援でも、何度も提案を出し直し、その度に訪問し、打合せをして、、これもコストがかかっているんです。
そういう意味からサプライヤの立場からはできれば早く決めて欲しいんです。あまりにがんじがらめに手順を踏んで、一次選考、二次選考、最終選考、と時間がかかればかかるほどサプライヤにはどんどん負担がかかっていくものなのです。
透明性公平性を確保しつつ、できるだけスピーディかつ最良の提案や見積を引き出すというのは実は結構難しいことだということをバイヤーの方々にも是非再認識していただきたいのです。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。