現場には、経験知に裏付けられた価値ある工夫やノウハウがたくさんあります。しかしそれらは、頭の中や引き出しの中にしまわれていて、組織的に活用できていないことがほとんど。これではあまりにもったいないですね。そこで、サービス向上やCS向上を組織的に進めるために「プロセスのモデル化」をご紹介します。
しかし実は「プロセス」を定義するだけでは、実は我々が具体的にどんな努力をしたらお客様に喜んで頂けるのかは分かりません。なぜなら、サービスの定義が示すように、「お客様の事前期待」次第で、サービスで努力すべきポイントが変わってしまうからです。そこで、プロセスの定義の次に行うのは、お客様がどんな事前期待を持っているかを定義します。
●事前期待については、以前の記事で触れたような、事前期待の構成要素を理解することが大切です。その上で、特にお客様ごとに異なる事前期待(個別的事前期待や状況で変化する事前期待、潜在的事前期待)にフォーカスして、プロセス毎にお客様が期待していることを定義すると効果的です。
●続いて、期待に応えるために我々が意識すべきサービス品質を定義します。ただ単に「サービス品質」と言われても、具体的に何をしたらよいのか分からないというのが現場の本音だと思います。そこでサービスサイエンスではサービス品質を次の6つに分解して定義しています。正確性、迅速性、柔軟性、共感性、安心感、好印象。これら6つのうちで特にどれが重要なのかを、プロセスごとに事前期待と対応させながら議論していくのです。
よくサービス部門での議論に挙がるのが、「正確性と迅速性が最も重要だ」ということです。しかし実は、競合もここには力を入れていて、お客様からすると「正確で迅速なサービスは、どの会社も同じでしょ」と思われてしまっていることが少なくありません。競合サービスとの比較もしながら、価値あるサービス品質について議論こと必要があるのです。
このようにシンプルにサービスプロセスをモデル化するだけでも、ただ単に「サービス改革!」や「CS向上!」と掛け声だけで活動を進めるより、はるかに具体的で価値ある議論や取り組みができるようになります。目に見えないサービスの強化はこのように、モデル化して見える形にすることで、現場や個人任せな活動から脱却して、現場や個人の価値ある努力や工夫を組織力に繋げられるような取り組みができるようになるのです。
是非、優秀な現場の方々の経験知やノウハウを、このような形でモデル化して、組織的なレベルアップに活かして頂けたら幸いです。
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2015.07.10
2009.02.10
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新