新規事業における素朴な疑問 (1) “万能”手法の信奉

画像: Matthias Uhlig

2015.08.13

経営・マネジメント

新規事業における素朴な疑問 (1) “万能”手法の信奉

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

新規事業に関するアプローチには幾つかあり、企業の置かれた経営環境次第で適切なものは異なるし、その中で適用すべき手法も一律ではない。それなのに流行の経営手法が万能のように効くと思うのはなぜ?

企業経営でも同様に、世間で評判になっている経営手法に経営者が飛びついてしまいがちなのだ。いわば“万能”手法にめぐり遭ったかのように。

でも、その企業・事業部門の背景・状況が異なるにも拘わらず一律のアプローチおよび手法で取り組もうとすると、まったく事業体としてのフィット感がないまま、貴重な経営資源を注いで関係者が懸命に努力しながらも、成果に結び付かない事態になりやすいのだ。

例えば、本来なら事業部門のサイズに合った小振りの一連の事業群を続けざまに創出すべきところを、身の丈に合わない大型事業を一発創出しようと躍起になった揚句、競争相手にことごとく先を越されてしまう、といった事態を招くリスクが高まる。無理なダイエットが長続きしないばかりか、リバウンドによって却って肥満が悪化するようなものだ。

実は新規事業の開発アプローチ(取り組みの考え方)というものは主なものだけで幾つかある。例えば弊社では3つの類型に整理している。

一番オーソドックスなのは「競争戦略」アプローチで、既存の市場・産業の枠組みの中でどう勝ち残っていくかを考えるものだ。主に市場が確立している場合に適用する。

次は「新カテゴリー創出」アプローチで、ビジネスの枠組みは既存のものを前提としながらも、ユーザーは今とまったく異なるカテゴリーを本当は欲しがっているのではないかということを考えるものだ。これは主に市場が成熟している場合などに適用する。

最後は「ビジネスモデル改革」アプローチで、(商品カテゴリーは既存のものであっても構わないが)ビジネスの仕組みそのものを変えてしまえないかと考えるものだ。これは、市場が立ち上がる前後や市場が成熟し切っている場合に主に適用する。

この順にリスクも段々高くなるので、当該の企業および事業部門の置かれた経営環境や競争環境、人材資源なども考慮して、どのアプローチが最適かを推奨する。その最適アプローチに沿って、(時間・コスト・人的資源など)与えられた条件下で最も成果を出せると考えられる具体的な手法を選別し組み合わせて、当該の新規事業推進のプロジェクトを設計する。

【参考】新規事業には4つの方向性がある http://pathfinderscojp.blog.fc2.com/blog-entry-91....

なぜこんなに個別の対応をする必要があるのか。それは新規事業の開発は戦略開発でもあり、そこでは手法が答を自動的に導き出してくれるものではないからだ。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/                  弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/         代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/

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