古今東西の企業の大失敗を研究し始めたフィンケルシュタイン教授は、やがて、ひとつの真実に気づきます。
それは、企業の失敗の原因として語られることの多くは、誤解だということです。
それを、我々研究チームは、「7つの俗説」と名づけました。
ひとつひとつ見ていきましょう。
1 経営者が馬鹿だった?:
これは、日本でもアメリカでも最もよく使われる説明です。
「こんな失敗をするなんて、ほんと馬鹿な経営者だな」
でも、実際のところは全く逆でした。大企業のCEOになるような人間は、そもそも若い時から極めて頭脳明晰で知られる存在なのです。
むしろ、失敗が大きくなればなるほど、それをしでかした経営者も優秀であるような、逆相関の関係さえ見えました。
2 トップが先を読めなかったから?:
「トップは頭は良かったんだけど、変化に気づくことができなかった」というものです。
これも、検証し始めてすぐに誤りだと分かりました。
なぜなら、外部環境変化に対応できずに失敗してしまった企業のトップも皆、環境変化の存在自体は明確に認識していたのです。
しかも、社内資料は、外部で起こりつつある変化を、多方面から繰り返し訴えていました。
3 現場が混乱していたから?:
「トップは優秀だし、変化も読めていた。でも現場のレベルが低かった」というものです。
これも誤解でした。現場のトラブルだけを原因として事業が挫折したような事例は、ひとつも見つけられませんでした。
4 トップの努力が不足していたから?:
「会社が大変だったのに、経営トップがのほほんと遊んでいた」というものです。
アメリカでも、日本同様、現場レベルの従業員からこうした意見は多く聞かれます。
「トップに危機感がないんだよな。ゴルフや接待ばかりして」と。
でも、失敗した大企業のCEOのスケジュールは、実際のところ凄まじいものでした。
24時間会社のために時間を使い、いったいいつ寝ているんだろう、というくらい。
5 経営トップにリーダーシップがないから?:
「戦略を決めても、トップが組織を引っ張ることができなかった」という理由です。
これは、まるっきり逆でした。大失敗するトップのリーダーシップは、素晴らしいものでした。「カリスマ的」と評される人もまた多かったのです。
6 該当企業が必要な資源を欠いていたから?:
「経営資源がそもそもなかったから」という理由です。
これもまったく違いました。大金を失う(大失敗をする)ためには、そもそも大金を持っていなければなりません。多くの大失敗をした企業は、必要充分な経営資源を持っていました。
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