医療制度はいま、大変動期を迎えている。医師の紹介に関して圧倒的な影響力を発揮してきた大学医局が弱体化、若い医師を中心に自由な動きが活発化している。そんな状況の下で急激に業績を伸ばしているのが『民間医局』、メディカル・プリンシプル社が展開する医師限定の人材紹介業だ。その登録医師数は他社の追随を許さない、しかも優秀な医師が多く集まっている。同社のビジネスモデルと成功の秘密を中村敬彦社長に伺った。
第四回
「医学部時代からベテラン医師まで」
■ドクターへの徹底サービス
『民間医局』の存在は『ドクターズマガジン』によって少しずつ、しかし確実に広まっていった。加えてドクターに対する切り札となったのは充実した無料サービスである。登録ドクターに対するサービスは自社内でまかなえるものはすべて基本的に無料を貫く。転職先の病院紹介ももちろん無料である。(*注1)
さらに「子どもを抱えた女医さんのためのベビーシッター派遣や医療過誤に備えた保険などもサービスとして取り揃えました。これらについてもドクターの負担ができるだけ少なくなるよう我々が交渉し、また費用の一部を負担してもいます」。
ここまでのサービスを提供している競合はない。狙いを定めたドクターたちにとっての「One & Only」のポジションを『民間医局』は時間と手間をかけて確立していった。
同業他社は医師に限らず看護師等の紹介も手がけている。もちろん、それなりのニーズがあってのことだが、看護師も扱う紹介会社と医師それも大学医局の勤務医を中心としたサービスを手がける『民間医局』では、大学医局にいるドクターたちに対してどちらが訴求力を持つかは自明の理だ。
「医療の世界は、大学医局の力が弱まったとはいえまだまだヒエラルキーがはっきりとあります。だから頂点にいる医局の先生たちを取り込むことが市場全体を押さえるためのキーポイントなんです。日本の医療を良くするためにも、司令官のポジションにいるお医者さんと心を開いた良い関係を結ぶことが必要ですから」。
優秀な勤務医とのネットワークは次の一手を考えるときにも力を発揮する。たとえば病院の再生である。
「病院の再生って、よく言われるようにファイナンスを回せば良いって問題じゃないんですよ。患者さんが来ない理由は何かといえば、良いお医者さんがいないことが根本的な原因なんだから。ということは病院を再生するためには、優秀なお医者さんを抱えていることが絶対条件になるでしょう」。
徹底的にドクターを大切にする、しっかりとよい関係を作る。ここに『民間医局』は全力を尽くしてきた。それが成功の秘訣であることは間違いないが、それだけでは一つ大きな疑問が残る。対価を得る相手は、どうやって見つけるのか?つまり優れた病院を顧客として開拓するために、同社はどんな営業政策を展開してきたのだろうか。
■良いお医者さんが良い病院につながる
実は対価を支払ってくれる顧客探しに同社はそれほど苦労していない。なぜなら医療界は構造的に医師不足であるため、優れた医者ともなれば引く手あまたである。良い医者をキープできれば、その受け入れ先となる病院はいくらでも見つかる。もちろん、その背景にあるのは研修医制度の変更による大学医局の弱体化だ。
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FMO第2弾【メディカルプリンシプル社】
2007.12.11
2007.12.04
2007.11.28
2007.11.19