医療制度はいま、大変動期を迎えている。医師の紹介に関して圧倒的な影響力を発揮してきた大学医局が弱体化、若い医師を中心に自由な動きが活発化している。そんな状況の下で急激に業績を伸ばしているのが『民間医局』、メディカル・プリンシプル社が展開する医師限定の人材紹介業だ。その登録医師数は他社の追随を許さない、しかも優秀な医師が多く集まっている。同社のビジネスモデルと成功の秘密を中村敬彦社長に伺った。
第三回
「信念のマーケティング戦略」
■極めてクリアなSTP
『ドクターズマガジン』は回を重ねるごとにジワジワと効果を現してきた。しかも、狙っていた効果だけでなく副次的な要素も続々と出てきたのだ。
「なかでも大きかったのが人的なネットワークを築けたこと。取材を通じて医学界のオピニオンリーダーともいえる人たちと知り合うことができ、彼らからじっくり話を聞くことができる。我々が目指しているビジネスの可否を尋ねることもできます。みんな一様に言っていたのが、2004年で間違いなく大学医局が弱体化すること。だからこそ我々のようなビジネスが絶対に必要だと応援してくれる人が多かった」。
まだ世論が何も形成されていない段階で(だからこそイノベーターだけに見えていることがあるわけだが)、『民間医局』のビジネスモデルが支持されたことが中村社長をどれだけ勇気づけたかは想像に難くない。創業時の信念はさらに強固なものとなった。
思いの強さは冷徹なまでのロジックによってパワーアップされた。『民間医局』は極めてクリアに、そのSTPを定めている。
まずセグメントである。
『民間医局』のセグメントマーケットは、優秀な臨床医を求めるレベルの高い病院である。そうした病院には臨床医を育てるシステムが備わっていることが多い。ハイレベルな病院に優れた人材を回すことで、より良い医療を実現する。創業時のビジョンをブラさないためにセグメンテーションが念入りに行なわれた。
次がターゲットである。
優秀な臨床医の卵はどこにいるのか。大学の医局である。だから『民間医局』は大学の医局に勤務する医者にターゲットを完全に絞り込んだ。ここが旧来型の医師紹介のビジネスモデルとの決定的な違いである。というよりも旧来型のモデルでは想定すらできなかった、まさにあり得ないターゲットを狙ったわけだ。
そしてポジショニングである。
ここでも逆張りを徹底した。アウトロー的な医者を定員割れしている病院に紹介するのではなく、優れた医者を優れた病院に紹介するのである。自社の立ち位置もエクセレントでなければならない。だからこそクォリティペーパーを発行しブランディングに力を入れる。
「といった具合に後から振り返ってのカッコいい話はいくらでもできますが、現実はそんな甘いもんじゃない。創業からの何年かは台所事情は文字通り火の車です。いつバーンアウトしてもおかしくないような状況が続いていました」と中村社長は当時を振り返る。
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FMO第2弾【メディカルプリンシプル社】
2007.12.11
2007.12.04
2007.11.28
2007.11.19