キャッシュ重視の世界の常識と支払条件が所与の条件である日本の常識の違いについて書きます。
一方海外ではどうなのでしょうか。購買ネットワーク会でもこの辺りが話題になりました。中国では全額、もしくは半額、もしくは材料費分は前払いというのが一般的な条件のようです。これは現地企業間でも同様だそうです。一方日本のBtoBの取引で前払いという条件は、買い手企業側にとっては、受容できない条件です。最近では中国企業との取引においてはジャパンプレミアムと言って、日本企業が購買企業の場合にはある程度日本型の後払いでも信用ができてきているのでOKとなっているようですが、これも一般的な条件ではないようです。買い手である日本企業側は前払は基本的にNGです。ですから商社を噛ませたり、色々苦労しながら取引をやられているのが実態のようです。
米国では”2/10 net30”のように30日サイトの売掛金を10日以内に支払えば支払価格を2%割り引くというような企業間信用が一般的に存在するそうです。つまり支払い条件の柔軟な設定をコスト削減などの材料にすることができるのが世界の「常識」なのです。
CCCという言葉を聞かれたことがある方はいらっしゃいますでしょうか。これはキャッシュ・コンバージョン・サイクルの略であり、メーカーであれば材料・部品を掛けで仕入れてから製品を製造し、掛けで販売し、その販売代金を現金回収するまでに要した日数、つまり1回のオペレーションが完了するまでに要した日数をいいます。当然のことながらこの日数が多い企業はその期間分のお金を持っていなければなりません。つまり自分が持っているキャッシュか、金融機関から借り入れたお金で賄うことになります。
欧米の経営者やCFOはCCCをかなり重要な経営指標として捉えています。実はこのメルマガでも何度も登場している米国アップル社ですが、CCCは2011年の数値で-(マイナス)61日になっているそうです。(「事業部門トップになる前に読む会計ブログ」http://blog.livedoor.jp/kaikeiseminar/archives/9047665.htmlより)
これはどういう意味を持っているのでしょうか。CCCがマイナスということは現金回収が先行し、支払が後になる逆のパターンなのです。つまり米国アップル社は製品の販売の61日前に製造に必要な現金を手に入れている(厳密には違いますが・・)ということなのです。驚くべきパフォーマンスです。このようなマイナスのCCCを実現するためには支払サイトは長いことが条件になります。世界の「常識」はこのように「キャッシュ重視」であり「支払サイト重視」経営なのでしょう。日本のシチュエーションとの違いに気が付かされます。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。