改革実施の初期段階では、現場の営業マンは上司の言動を観察している。本気で評価のやり方を変えるつもりがあるのだろうか、と。
~営業改革を考える (7) 営業研修に思想は根付いているか~ の続き
以前の話である。その昔仕事をした地方企業を久し振りに訪問する機会があった。
彼らが取り組んでいる最中の営業改革に話題が及ぶと、プロジェクトで一緒に苦労した役員(当時はヒラ社員だったが)が愚痴をこぼした。「営業プロセスも変えた。営業研修の中身もそれに合わせて変えた。営業マンの評価の基準も、結果重視からプロセス重視に変えた。それでも結局、営業の連中の行動は以前と大して変わらない。何故でしょう?」と。
この人の性格からして、冗談を言ってこちらを困らせようとしているわけでもなさそうだ。正直、小生がコンサルしたわけではないので事情が分からず、戸惑ってしまった。
よくよく訊いてみると、地元のコンサル会社に手伝ってもらって、しっかりした営業改革をデザインした。実施局面に入って、既に数カ月経っている。しかし個人的に親しい営業マン達に話を聞くと、現場ではほとんど何の変化もない、とのことらしい。
小生はこのコンサル会社の評価はよく知らないが、特に手落ちがないように最初は思えた。
しかし試行もなしにいきなり実施フェーズに突入したところが気になり、「もしかして営業マンに対する評価の方式を変えただけで、上司に対する評価者研修やその後の実施支援などのフォローをしていないのでは?」と尋ねた。
すると、評価者研修はまとめて一度集合研修をしたそうだが、その場には立ち会わなかったので徹底度は確認できていない、現場での実施支援というのは特にない、という答だった。
残念ながら「営業改革」という仏を造ったのに、「魂」が入らないままのようだ。
「結果(端的にいえば売上)重視からプロセス重視(売上を上げるために適切な手を打ったかを問う)への変革」という方向性は多分、営業マンも上司も理解していたと思うが、営業マンは会社の本気度については疑っていたのではないか。
上司諸君はそんな営業マンの様子見の態度を見て、「変革の方向」に対する納得が得られていないと思い、本当に変えていいものか迷ってしまっているのではないか。
現場に入り込んで確認しないと本当のところは分からないが、いわゆる「ニワトリと卵」の状態になってしまっている可能性が高い。件(くだん)の役員にはそうお伝えした。
営業現場にとって抜本的な改革であればあるほど、改革実施の初期局面では個々の営業マンは様子見の態度を示しがちである。そして会社、特に評価者である上司の本気度を測る。それは上司の指導時のコメントや自分や周りに対する評価などを通して観察され、判断される。
営業改革
2016.09.14
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/