営業改革の一環として、研修は不可欠である。しかも改革の「思想」と整合した、メリハリのある研修でなければいけない。
~営業改革を考える (6) 報酬・インセンティブ変更は熟考せよ~ の続き
ある大手IT企業の営業研修担当者と話したときのことである。
この企業では数年前から営業改革を進めており、その過程で研修体系も相当変わったそうだ。彼は研修メニューの豊富さを半ば誇り、しかし半ば自嘲気味に「でも、多過ぎるくらいなんです」と言い出した。
興味本位でそのリストを見せてもらったが、確かに多い。しかも話法やプレゼンなどのスキル系と、技術や商品知識系の研修が随分多い(後者は業界特有の事情で納得できた)。
何か特別の方針があるのかと尋ねたが、特にないという。営業幹部の人たちの要請を受けて増やしているうちに、ここまで増えてしまったのが現実だというのだ。
そこでリストを再びめくりながら、その企業の営業にとって重要と思われる、「顧客課題の引き出し、理解」や「解決提案力向上」のための研修メニューがどれほど充実しているのかを質問してみた。ところが、「これとこれがそうです」といった特定ができないだけでなく、残念ながらあまり明確な回答は得られなかった。
彼の認識では、「営業改革」においてデザインされた営業プロセスに基づき、全営業マンに対して研修を実施したし、その後も研修メニューの中に残しているので、営業マンならば(途中入社の人を含め)、関連研修を一度は受講しているという。
この研修部門は日々の業務に手を抜いていた訳ではない。むしろ反対だ。
しかし営業改革の過程において「改革思想」がきちんと描かれなかったのか、もしくは徹底されなかったのだろう。研修部門ではいつの間にかその「思想」が薄れ、目先の枝葉的な必要に押され、どんどんメリハリがなくなってしまった、というのが真相のようだ。
その結果は、もしかすると一旦は実現したはずの営業改革が形骸化していることを意味しているのかも知れない。
何度もいうが、営業改革においては「改革思想」を明文化し共有化することが不可欠である。ここでいう「改革思想」とは、「戦略的狙い」に基づいて、営業のあり方をどう変えたいのかという基本的考え方である。
その思想と整合性を保つように研修メニューの構成と中身にも常に目を光らせておく必要がある。特に「改革思想」そのものを伝えることが重要なのはもちろん、それを反映するような基本メニューの重要性はどれほど強調してもし過ぎるということはない。
先のIT企業についていえば、デザインされた営業プロセスそのものの理解と習得、顧客理解と提案力強化のための基本メニューをまず特定し、その基礎の上に諸スキルや技術・商品知識を加える、といった層分けを実施すべきと担当者にはお伝えした。
さて、本気で取り組んでくれるといいのだが。
(本稿は2013年4月のコラム記事に加筆修正したものです)
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
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