私は政府調達に欠けているモノで一番重要な視点は「サプライヤマネジメント」の概念だと考えます。
これは何もシステム開発に限った訳ではありません。コンサルティング業務などの業務委託でも全く同じです。もっと言えば車を作り出したころのトヨタ自動車の取引も全く同じです。トヨタ自動車は(その当時)積極的にトヨタに売り込みをかけたい部品メーカーがいなかったのです。ですから自分達で部品メーカーを育てざるを得なかったのです。政府のシステム調達もそうです。もしこのような失敗リスクが高い仕事ならそもそも実行可能なプロジェクトマネジャーやサプライヤは絞られます。だったら彼らを育成し、彼らと一緒にノウハウを築く関係性をつくるべきです。そして一度仕事をやってもらったら二度と離してはならない。。
これがサプライヤマネジメントなのです。
政府などの公共調達は基本的に「みんなが仕事を取ろうとする、またその仕事を遂行できる」という前提の仕組みになっています。だから「広く調達先を求める競争公開入札が◎」という考え方です。
でもちょっと考えてみてください。この記事にあるようなシステム開発会社の多くは入札時はやる気があったものの、プロジェクト開始後様々な要件変更や計画変更、あげくの果ては分割発注が原則と言われ、当初予算に対して大幅なコストアップとなったとしても回収できず、多くのプログラマーはノイローゼになり、、、美味しいことなんて何もありませんし、その上「税金の無駄使い」と批判されるわけです。
これでは政府の仕事を積極的にやりたいと考えるシステム開発会社が少なくなるのも当たり前です。そうすると結果的に「ベンダーロックイン」になってしまうのです。(実際になっているし。)
繰り返しますが私は入札やコンペを否定しているのではありません。
しかし「比較できないものを無理やり比較しようとするから」いけないのです。
「比較できないもの」は「比較できないもの」なりの調達の仕方があります。
例えば
「工数や単金の精査を高め作業内容や作業の効率性をチェックする」
「実現成果に応じた報酬を支払う」
「長期契約の生産性向上の目標提示をしてそれを実現させる」などです。
それで契約価格が高くなってしまうというならそれはそれで仕方がないじゃないですか。開発中止になって皆が損するよりも高いお金払う方がましです。
以前にも述べましたが政府調達が傾倒しようとしている公開競争入札やオークションは誰でもできます。何故なら簡単だからです。しかしそれを適用できないようなモノまで全て適用しようという考え方は危険です。
競争入札もオークションも効果的に活用できる最低限の条件は「少なくとも2社以上の競争環境ができている」、つまりその仕事をやりたいと考えている会社が2社以上あり力が拮抗している、というのが条件になります。
世の中にはそうでない買い物もいくらでもあるのです。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。