100円ショップのブルーオーシャン・セリアの場合

2012.03.22

経営・マネジメント

100円ショップのブルーオーシャン・セリアの場合

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 100円ショップ業界第2位のセリアが運営する「カラーザデイズ」が進化を遂げようとしている。同社が目指す新たなポジショニングはどこにあるのだろうか。

 2002年頃、業界の成長期にあった100円ショップ業界。現在は完全に過当競争が続き、「ブルーオーシャン戦略」のW・チャン的にいえば、血で血を洗う「レッドオーシャン」と化している。その中で、セリアは業界第2位の座をキャンドゥからもぎ取ったという過去がある。(業界1位は不動の地位でダイソーが占めている)。

 もぎ取ったという表現は正確ではなかったかもしれない。同社の成功のヒミツは「バリューイノベーション」である。顧客にとってあまり重要ではない機能を「減らす」または「取り除く」ことによって、企業と顧客の両方に対する価値を向上させるのだ。セリアは「カラーザデイズ」という店舗ブランドを立ち上げ、「オシャレ100円雑貨ショップ」という独自のポジショニングを確立した。ポイントは3点だ。取扱商品をデザイン性の優れた雑貨のみで構成。什器の高さを抑えて通路も広くし、ゆったりした店内を実現した。その代わり、商品点数を絞り込んだのである。つまり、取ったポジションは「オシャレな品揃え×オシャレな店内空間」だ。

 3月19日付日経MJの記事によれば、セリアはカラーザデイズの店内をリニューアルさせる模様だ。新型什器を導入したとある。それによって、商品点数を3割増やしたという。
 これは一つの勝負だったであろう。品数を減らしゴチャゴチャした店内にしないことが、レッドオーシャン離脱のキモである、セリアが見出したKSF(Key Success Factor=成功のカギ)であったはずだからだ。しかし、いつも代わり映えのしない品揃えではやがて魅力を失う。100円ショップ来店客のKBF(Key Buying Factor=購入理由)の1つは品揃えであることは否めないのだ。

 セリアは一つの解を見出していた。什器の数を増やすものの、幅を狭くして通路のスペースを確保。店のゆったりさを損わないようにしたのだ。通路の幅や店としてのゆったりさを損なっては独自のポジショニングを失い「ただの100円ショップ」となって、レッドオーシャンの戦いに逆戻りするからである。新たなポジショニングは「品揃えの多さ×オシャレな商品&店内空間」だ。

フィリップ・コトラーは「マーケティングの最重要課題の一つはポジショニングである」と著したが(コトラーのマーケティングコンセプト:東洋経済)、まさにセリアの「カラーザデイズ」の成功のポイントはそのポジショニングを堅持している点にある。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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