人を動かすのは「感情」という動力。ビジネスは損得勘定ではない。2012年、勝ち組企業の決め手は、「感情」という動力にあり。
東京で開催されたトニー・シェイ、チャリティ講演のまとめ
2011年11月21日、東京にてザッポス社CEOトニー・シェイを招き、チャリティ講演を主催しました。
ザッポスといえば、設立10年未満にして年商10億ドルを達成し、2009年にはこれまた10億ドルを超える買収金額でアマゾンの傘下に入りました。
「企業文化」を戦略の中核とする、というユニークな経営の考え方と、「顧客を満足させるためなら、ほとんど何をしてもかまわない」、「マニュアルなし、コール・スクリプトなし、コール制限時間なし」という型破りのコンタクトセンターでも有名です。
そのザッポスを黎明期から年商10億ドル企業(今年は20億ドルに到達するくらいでしょう)に育てあげた若きカリスマ経営者、トニー・シェイを招いた、感動の講演会でした。
今日は、その講演の折にトニーが話してくれたことをまとめる、というよりは、2011年の終わりということで、今年のまとめも兼ねて、「今、アメリカの(そして日本の)市場で起こっていることは、こういうことじゃないかな」、「2012年には、こんなことが期待できるんじゃないかな」ということを書いてみたいと思います。
スキルではなく、心を磨く
ザッポスに関する本(私の著書である『ザッポスの奇跡』でも、トニーの著書でも)を読まれた方は、もうよくご存知だと思うのですが、ザッポスの社員は、入社直後に4週間の研修を受けます。その研修の際に、役職や職種に関係なく、すべての社員が、コンタクトセンターでの顧客対応の特訓を受けるのです。
その背景にあるのは、「徹底した顧客サービス(エクスペリエンス)志向の会社をつくる」ということです。そうするためには、ザッポスならではの顧客サービスの魂を社員に植え付けます。「顧客対応のスキル」を教えこむのではなく、「顧客のことを真剣に思いやる心」を磨くのです。
もとより、ザッポスでは、入念な面接のプロセスを通して、「顧客サービス志向」の人だけを雇っています。人が好きで、人を喜ばせたいという心(原石)を既に持っている人を雇い、それをぴかぴかに磨き上げる、それが、入社直後の研修の役割なのです。
幸せを届ける会社
講演の中で、トニーはきっぱりと言っています。
「ザッポスの使命は、幸せを届けることです」
ザッポスでは、その「幸せ」を受け取る対象を、顧客だけではなく、社員や取引先、そして社会全般にまで広げています。
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トレンド予測
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。