この冬のTVドラマは、松嶋菜々子主演の「家政婦のミタ」が視聴率で、ぶっちぎり。瞬間視聴率30%を超えの話題は、10%台を右肩下がりの「南極大陸」とは、対照的だ・・・。この大きな差の原因は何なのかを考えてミタ。
どちらも、このご時世に欲しいヒーローの姿を描いているのに、どうしてこうも差があるのか・・・。
「南極大陸」では、日本の誇りのために南極観測のために命をかけた男たちの姿を暑苦しいくらいに描いている。主演である木村拓哉は、過酷な状況の中で、いつも叫んで壁を越え、しがらみを乗り越えて任務を遂行する。お金もかかっているし、決して悪いドラマではないと思う。涙することもある。しかし、リアリティがない・・・。
東日本大震災の過酷な状況や自衛隊員の活躍を目の当たりにした我々視聴者にとって、50年以上も前の物語の再現をされても説得力がない。情熱だけで震災後の問題を突破できるなら、もうとっくに解決しているはすだ。
TBS開局60周年記念らしいのだが、、、フジテレビ開局50周年ドラマとして放映された『不毛地帯』が大コケした反省が生きていない。視聴者のリアルな暮らしを感じとるセンスに欠けている。大手マスコミ各社の経営陣は、大概が70歳前後である。ここにも、昔は良かったと言い続ける「老害」の影響が出ている。
一方で「家政婦のミタ」は、非常に明解である。松嶋菜々子演じる家政婦は、情熱ではなくお金で動く。そして、無表情に、完璧に業務を遂行する。出てくる登場人物は、不倫している父親にダメな息子や娘、家族の態をなしていない一家・・・。そこらへんの身近かつハードな問題を、次々と感情抜きで解決していく。その対価は、「ありがとう」とかの感情や道徳ではなく、金銭的インセンティブなのである。消費社会の行き着いた先のあらゆる問題を、お金を貰って解決していく。これって、資本主義社会にふさわしいリアルなヒーロー像ではないだろうか。松嶋菜々子演ずる家政婦のミタさんは、「人間」ではなく、「商品=サービス」として描かれているのだ。
中国人は道徳心が無いから儒教が生まれた。
日本人は勇気がないから武士道が生まれた。
アングロサクソンはずるいからフェアプレーの精神が生まれた。
こんな言葉に触れたことがある。必要なものは「ないから生まれてくる」ということだ。
現在の資本主義社会の隘路を「情熱」だけで切り抜けられるなんて、もう誰も思ってやいやしない。それは、リアルではない。お金で動いて利権を得たはずの政治家は、この社会の問題を何も解決してくれない。お金を儲けたはずの大きな会社の役員達は、自分の地位を守るのに必死である。
「お金のことで生まれた問題をお金で解決してくれるスーパーヒーロー」が、この社会にはいないのだ。
新しい資本主義社会のヒーロー「家政婦のミタ」のいちばんの魅力は、業務遂行能力である。しがらみなど気にしない問題解決能力である。視聴者は、いつも「ないものねだり」なのである。
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有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役
昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。