ビジネスマンの心得やエンジニアのあるべき姿といったノウハウ本は、書店を探せば手に入るかもしれない。しかし実際に自分の仕事に当てはめて考えた時、微妙に手直しが必要になる。
ここまでプロジェクト・メンバーがこだわってガイドラインを作ったのは、1つはアシストには『哲学と信念』という、創業者社長のビル・トッテンが書いた企業理念があるからだ。これはアシストに入社する前に必ず読まされる社員のガイドラインだが、これを書いた時トッテンは何度も幹部に読ませ、納得いくまで話し合ったという。同じように木村たちも完成前にはβ版を作って公開し、社員の意見を採り入れた。
「技術者のガイドラインは、企業理念である『哲学と信念』を基本に、これまで漠然と描かれていたものを実際のあらゆるシーンで技術者が取るべき行動として明文化したつもりです。もちろんこれを作成後、急に行動が一変したというような変化は自分の中で起きていませんが、これまで迷った末辿り着いた答えに、早く辿り着けるようになった気がします。また、課のメンバーやプロジェクト・メンバーに対しても、なぜこのように自分が判断するのかという理由も説明しやすくなりました。そういう意味では、自身にも他者に対しても、「こうすべき!」という情報をより明確に迅速に発信、説明しやすくなったと思います」と木村は言う。
実際の案件やトラブルは複雑な要素をはらんでいるため、そんなにシンプルに答えが出るものではない。しかしガイドラインの指針を基本に置き、その上でケースに応じた応用を加えられるような効果もある。何よりも会社として、技術者はこうあるべきだということが明確になっていれば、大きく道を外れることはないだろう。
松尾もガイドラインに即効性は求めてはいないと言う。
「じわじわと行き渡って、無意識に個人の振る舞いの根源になったらいいのかなと思います。企業理念である『哲学と信念』が魂だとしたら、理念を具現化して行動に移す、心臓や血液のように。体にじわっと染み込むのが理想ではないかと思います」
どうすればガイドラインを根付かせることができるのか。松尾は、それには物語が必要なのではないかと考える。「単にルールや規約、方針だけでは絶対に根付かないし誰もが忘れてしまいます。例えばSoup Stock Tokyoの企画書のように、架空の“アシスト太郎さん、アシスト花子さん”を設定して、その人が日々もがきながらこのガイドラインを実践している、または実践しようとしている物語を用意してそれを社内に広めることで、日常業務で迷った時、“そう言えばアシスト太郎ならどうするだろう?”と考えてもらえるような風土をつくるのも面白いかな、と思います」
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