ある日社長から、『来たるエネルギー資源の減耗と価格高騰により経済活動が停滞した時に備えて、今から消費を減らし、家庭菜園などを始めるように』というメッセージが届いたら、あなたならどんな反応をしますか。
牧野が家庭菜園を始めたのは7年前で、2坪の市民農園を借りた。それ以外にも妻の実家が200坪の農園を借りているので、年に2、3回、収穫の手伝いに行っているという。
「なによりも一番の収穫は家族の笑顔です。現在は大学生の娘が、野菜嫌いだったのが家庭菜園で採れた野菜であれば喜んで食べるようになりました。自分自身にとっても運動不足、精神的なストレスの解消も土いじりでリフレッシュできます。また思わぬ効果としては地域の人(菜園仲間)との交流の機会が増えました」と牧野。
作物を作るのは個人的な作業であるが、その過程において周りの人々とのつながりが生まれる。野菜などの作物を育て、それを食べて生きている人間のあるべき姿なのかもしれない。
7年間家庭菜園をしてきた牧野は、しかし家庭菜園の限界についてこう語る。
「自給自足は限界があります。食生活の基本は穀類(米、麦、とうもろこしなど)で、家庭菜園ではそれらを作るには無理があります。給料が下がった分を補填するには、菜園の賃貸料や肥料、苗のコストを入れると金銭的にはマイナスになるでしょう。でも健康と幸福をその効果として計算するならプラスになりますが」
東京を地震が襲った3月11日、牧野は有休をとって畑で種芋を植えていたところだったという。
「おかげで帰宅難民にならずにすみました。震災の復興と共にじゃがいもが育ってくれ、7月初頭にバケツ3杯も収穫できました」牧野の畑は今夏野菜が終わり、冬野菜の準備が始まるところだ。
未来は常に現在の延長であり、年収が6割になる日など考えられない、考えたくない人がほとんどかもしれない。しかしトッテンは、過去の歴史と現在の状況を冷静に見据え、安くて豊富な化石燃料によって支えられてきた私たちの大量消費、大量生産という便利な暮らしが終焉にきていると警鐘を鳴らし続ける。それは急激な変化ではなく、ゆっくりと日本社会に影響を及ぼしてくるのかもしれない。実際、NECビッグローブがIT企業でありながら家庭菜園運営に進出しているのも、いずれ日本人が食料自給率の低さに直面しなければならない日を見据えてのことだろう。
しかし農業プロジェクトが発足しているアシスト社内でも、参加している社員は登場した4人の他、全社員800人の1割に満たない。それでも、それ以上の多くの社員が、経営者が利益追求だけでなく、石油が減耗するという話から食料問題、日本人としてどう生きていくべきかという理念を社員に説き、それを経営に反映させていることは誇りに思っている。
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