多くの業界で市場の寡占化や商品のコモディティ化が進み、競争が激化している。そこでは価格や機能などで血みどろの競争が繰り広げられている。しかし一方で、競争がない独自の市場を創り出し、独り勝ちしている企業もある。
エデュテイメントを使った小さな塾のブルー・オーシャン戦略
学習塾業界は少子化ゆえに市場規模の縮小のみならず、予備校や通信教育企業などが参入するなど、市場のオープン化もあって大きな変革期に差し掛かっている。今後、レッド・オーシャンに身を沈めないためにも、現在の価値曲線と戦略キャンパスからブルー・オーシャンを見い出してみたい。
今回はそのKFSにデジタル教材、特にエデュテイメントと呼ばれる教材を置き、下図に新しい価値曲線を描いてみた。エデュテイメント(Edutainment)とは、教育(Education)と娯楽(Entertainment)を組み合わせた造語であり、楽しく学習するものである。
このエデュテイメントを活用することで、従来の集団指導や個別指導とは、全く違うビジネスモデルの塾となった。「合格実績」や「講師の学歴」「保護者対応」を切り捨てるか減らすかした結果、新しい価値である「楽しさ」と共に「新しい生徒層」までも創出でき、新たな戦略キャンパスを描けたのだ。 生まれつきデジタル・ネイティブの子供たちは皆、携帯型端末機(アップルiPadやiPhone、任天堂DS等)を器用に扱い、エデュテイメントの学習コンテンツで「いつでも」「どこでも」手軽に勉強することができるのだ。こんな塾(学習の場)があったら、大変面白いと思う。決して既存の考え方では、出てこないアイデアである。
そもそも地域に密着する小さな塾は、引き算で創られるべきだと思う。あれも、これもとシステムを追加していくのではなく、はっきりと捨てるものは捨てて、大事なものを充実させることが重要である。教育というソフトで勝負する塾業界は、規模を求めなければ資本に左右されることなく、地域に根付いた経営が可能である。
この点で、同じような商品しか置けなかった町の酒屋が、コンビニになったケースとは大きく違う。だから小さな塾はアイデア次第では、生き残ることができるのだ。それには地域社会に溶け込んだ独自性のある戦略が必要であり、ブルー・オーシャンがひとつのキーとなってくるだろう。
(*)Key Success Factor、事業を成功させるためにキーとなる要因のこと
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2011.10.07
2013.04.11
株式会社経営教育研究所 代表取締役
教育ビジネスのアナリスト/コンサルタント。専門はフランチャイズ(FC)とデジタル関連。個別指導FCやベンチャーなどの教育機関を経て、2009年に民間教育シンクタンク経営教育研究所を設立。教育と異業種を結ぶエデュイノベーションLLPパートナー。