企業人事において、「任せられる」「成果が出ている」「自信を持っている」という状態を見て、十分に成長したと判断し、上の階層に昇進させたら、全然駄目だったということがよく起こります。これは、なぜ起こるのでしょうか。
今回は、「どうなれば、その人が昇進に値する成長をした」と判断できるのか、あるいは、「昇進させるべきは、どのような人か」について考えてみます。読者の皆様の会社でも、「彼は立派になったよね」「アイツは成長したよね」といった会話がなされていると思います。そして、その成長ぶりが経営的に認められれば、昇進という結果になります。果たして、それでよいか。企業組織において、成長と昇進の関係はどうあるべきでしょうか。
「彼は成長した」と言うとき、多くの場合は、次のような内容です。
一つは、「仕事を任せられる」「放っておいても大丈夫」という状態になったときです。色々と教えないとダメだった、時折ミスがあった、ちゃんと見ておかないと不安だったのが、そうでなくなったら成長したと感じます。
二つ目は、「成果や業績を出せるようになってきた」ときです。受注が上がるようになってきた、期待通りの効率的なオペレーションができるようになった、企画を通したり、トラブルを解決したりできるようになったら、成長した証だと思えます。
三つ目は、「自信を感じる」「言動にそれなりの雰囲気が出てきた」ときです。顧客や取引先との対応を見ても、社内の会議や業務上のコミュニケーションを見ても、その立場や役割に相応しい感じがすると、育ってきたなあと思います。
もちろん、これらで成長した、育ってきたと判断することは間違ってはいません。が、ちょっと物足りない、何かが欠けているのではないか、と私は考えます。それは、「その後も成長し続けるかどうか」という観点です。企業の人事において、「任せられる」「成果が出ている」「自信を持っている」という状態を見て、十分に成長したと判断し、上の階層に昇進させたら、全然駄目だったということがよく起こります。これがなぜ起こるのかと言えば、その後も持続的・自律的に成長するかどうかという検討がなされていないからです。
「任せられる」「成果が出ている」「自信を持っている」は、その人が置かれている立場や役割の合格基準であり、その階層の卒業基準です。それに対して、「その後も持続的に、自律的に成長していくか」どうかは、その上の立場や役割への入学基準とも言えます。この入学基準からの検討がないと、全ての役職や階層が、卒業できた“ご褒美”や“上がり”のポジションになりかねません。昇進に値する成長かどうかは、「任せられる」「成果が出ている」「自信を持っている」に、上の階層の入学基準としての「持続的・自律的な成長力がある」という観点を加えるべきだという訳です。
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組織というもの
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NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。