不確実性が高まる中、ビジネスでは、常に新しいアイデアを考え続けることが求められています。 考える力、即ち「思考力」を鍛えるための読書術を紹介します。
十分な情報を収集してプレゼンに臨んだにも関わらず、参加者の反応が悪い。そんな経験はないだろうか。その原因は、「情報の抽象化」が不十分な状態でメインメッセージが不明確だからです。
抽象化とは、情報を組み合わせ、より上位の概念を導くことである。ピラミッド・ストラクチャーを学んだ人なら簡単にイメージできると思うが、抽象化は、What?、Why?、2つの問いに対する答えで構成される。
下位の複数のメッセージからWhat?(それで何が言えるの?)によって新たな上位メッセージを作り、これを何度か繰り返すと、最終的には、ピラミッド・ストラクチャーの最上部であるメインメッセージにたどり着く。コミュニケーションの場面であれば、相手に伝えたいことを一言で要約した内容である。
Why?は、What?のメッセージに至った根拠を述べる部分であり、What?の答えがWhy?できちんと説明できるかを自己チェックすると良い。
抽象化がうまくできないと、情報に右往左往するばかりで本質を見失ってしまう。複数の情報の共通点を見出して情報のレベルを揃えて整理をした上で、抽象化によって本質的なキーワードや概念を探っていく。
この思考方法を身につける即効薬は残念ながらない。日頃から地道に訓練を積むしかない。具体的には、考える読書をすることだ。
ここ数年のベストセラーをみると、「やさしい内容」や「すぐにわかる会計」のようなマニュアル本が多い。マニュアル本などは、自ら考えなくとも、答えを提示してくれるので便利であり、私もお世話になることがある。しかし、マニュアル本などから得られることは表面的なことであり、深く考える思考力を身につけるには不十分です。
難易度の高い本を月に1冊でも良いから読んで欲しい。そして、その1冊から学んだことを、何倍の時間もかけて考え、実際に文章に書き出したり、あるいは、人に説明することをお勧めします。
読書家と言われている方は、本を読み終わったら次の本を読み始めてしまう。確かに、幅広い知識や情報をインプットするには、多読は効率の良い読書方法であるが、これでは読書をしても考える力は身につかない。
情報大爆発の時代だからこそ、限られた情報を深く咀嚼することに意味がある。
キャリア教育
籔 孝昭
AllAbout ガイド
金融機関で新規事業の立案や子会社の設立など企業経営全般に携わるとともに、大学や企業で「論理思考」や「マーケティング」に関する講義を行う。そこで、企業が求める人材と学生のギャップを目の当りにして、教育業界に転進。