TOEICより大切なもの

2011.05.01

ライフ・ソーシャル

TOEICより大切なもの

籔 孝昭
AllAbout ガイド

有名大学を卒業しても就職できない若者が増える中で、有名企業の一部が新卒採用の基準にTOEICスコアを導入したことで、英語教育に対するニーズは高まっている。 しかし、大学生が身に付けるべきは思考力の土台となる知識である。

リーマンショックを契機に就職活動環境は一変し、それまでのプチバブル状態から氷河期状態に突入したまま、氷河期を脱する気配がない。
有名大学を卒業しても就職できない若者が増加する中で、武田薬品工業などの有名企業がTOEICのスコアを入社基準として公表したことで、英会話の必要性を感じる学生は更に増えるであろう。

しかし、日本人全員に英会話が必要なのであろうか?
日常的に英語でコミュニケーションをしなければならない企業は確かに存在するが、そのような企業の多くは大企業や外資系企業であり、おそらく全体の学生の10%未満しか就職できない企業である。
日本人の多くは、海外旅行に出掛けた際に、買い物をしたり、観光地や空港、駅で案内板を読んだりしているではないか。また、道を尋ねられた外国人旅行者とコミュニケーションする姿もよく見かける。必要に迫られれば、日本人の大部分は英語でコミュニケーションできているのだ。これは、学校教育による基礎力の賜物である。

社会人にとって必要な能力として「思考力」や「行動力」に異論を唱える企業は少ないと思う。思考とは文字通り「考えること」であり、身近なところでは、「休日に何をしようか?」といった個人的なものから、「プレゼンテーションのシナリオをどう組み立てればよいか」といった仕事上での課題の解決策を作成するという行為まである。
前提条件、プロセス、フレームワークが同じであっても、その解決策は人によって違ってくる。人によって解決策が異なる理由は、人が持っている知識の広がりと深さが異なるためであり、優れた思考力のベースは知識である。

学校で学んだ知識は社会では役に立たないと言う意見がある。確かに、微分積分や相対性理論をビジネスで使った経験のある社会人は極めて少ないかもしれない。しかし、料理を作るときに、材料の特性や調理方法を知らないと全くどうやってよいかわからない。
料理を作る場合と実社会が異なるのは、実社会で必要な知識が何であるか?を特定することができないことである。自分の専門分野とは全く関係のない知識が役立つこともある。

知識が何に役立つかは、あなた次第。でも、その応用は無限大!

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籔 孝昭

籔 孝昭

AllAbout ガイド

金融機関で新規事業の立案や子会社の設立など企業経営全般に携わるとともに、大学や企業で「論理思考」や「マーケティング」に関する講義を行う。そこで、企業が求める人材と学生のギャップを目の当りにして、教育業界に転進。

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