震災対応 ~リスク管理とその現実、アシストの場合~

2011.04.14

仕事術

震災対応 ~リスク管理とその現実、アシストの場合~

喜田 真弓

2011年3月11日、太平洋三陸沖を震源としてマグニチュード9という大地震が発生し、その後20メートルを超える津波が襲うという大災害が日本を襲った。さらにはそれによって福島原子力発電所が停止、戦後最大の自然災害は世界に放射能汚染をもたらすほどの規模となり、発生から1ヵ月たった今でも予断を許さない状況が続いている。

しかし問題は地震と津波だけではなかった。東京電力福島第一原子力発電所の1~3号機で水を注入して冷却する装置が故障し、11日夜、政府は原子力緊急事態を宣言。原子炉内の水位が低下し燃料棒が露出して放射能が漏れる可能性があるとして、原子力発電所から半径3km以内の住民に「避難」させるよう地元自治体に指示も出された。

翌12日には原子力発電所の正門前での放射線量が通常時の約8倍、1号機の中央制御室では約1,000倍にも達し、炉心の溶融が始まっている可能性が高いと発表され、夕方には1号機で水素爆発が起き、住民への避難命令は原発から半径20km圏へと拡大した。13日日曜日、気象庁はマグニチュード9.0を記録した東日本大震災について、3日以内に70%の確率でマグニチュード7以上の余震が起こる可能性があるとして警戒を呼びかけた。

炉心の溶融の可能性のある原子力発電所と、大きな余震が起こる可能性が70%。この状況の下でビル・トッテンは14日から3日間、一般社員を自宅待機とすることをトップダウンで決定する。『IT企業のアシストで、なぜ今アマチュア無線なのか』でも触れたが、トッテンは2003年にも大地震の予測がなされていることを知り、発生時期と予測された一週間、自社で行うセミナーなどをキャンセルし、社員にも出社を禁じたことがある。

「ビルさん(アシスト社員は誰もが社長をこう呼ぶ)が何よりも社員の命を優先して物事を決定していることは十分承知していました。最も重要な顧客サービスを提供するにも社員がいなければ提供できませんから。ですから日曜日に、マネージャ以外は14日から16日まで自宅待機するようにとの連絡が入った時も驚きませんでした。でもサポートセンターはマネージャだけでは仕事になりません。そこで、自宅や家族、そして通勤の安全が確保できる状況であれば、出勤してもらえるようマネージャを通してサポートセンターのメンバーに連絡しました。14日は一部交通機関が運休していましたが8割のメンバーが出勤し、業務対応をしました」と星。

「翌15日も状況は変わりませんでしたが、お昼の段階で常務の森沢と取締役の小林から『原子力発電所の事故が今後どれくらいで収束するかわからない状況なので、お客様へのサポートサービス継続と社員の安全の目的から、市ヶ谷のサポートセンターのメンバーを大阪へ移動させるように』という指示を受けました。その時点では正直言ってそこまでする必要があるのかと思いました。すぐに移動できるメンバーは限られていますし、中日本/西日本のフィールド技術者の応援も不可欠な状況で、複雑化したサポート・フローをどこまで支援してもらえるのかも未知数。なので否定的な気持ちでしたが、森沢の『今は非常時。あれこれ細かいことを心配していてもしょうがない。今できることをやるべき!』という一言ですぐに調整に入りました」

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