1987年のアサヒ「スーパードライ」発売以来、ビールのシェアを侵食され、ビール系飲料全体でも2001年についに41年ぶりに首位陥落の憂き目を見たキリン。その後、第3のビールの拡充などで09年に9年ぶりの首位奪還を果たし、営業強化をはじめ様々な改革を断行している。
ホンダの「ワイガヤ」に代表されるような、組織を越えた情報・知識共有は重要である。しかし、一朝一夕に壁は見えないココロの壁は壊れない。故に、キリンは物理的な壁をまず壊したのである。
上記の戦略意図をバリューチェーン(Value Chain=VC)で考えてみよう。
従来のVCは<商品企画→製造技術設計→製造→営業→出荷物流>というような形になっていた。それを<商品企画・製造技術設計→製造→営業→出荷物流>という形に改めたのだ。間違い探しのようだが、その違いがわかるだろうか。商品開発研究所=商品企画(R)、酒類技術開発センター=製造技術設計(D)が→でつながれた、「受け渡し」の関係から、「一体化」へと変化したのである。
同業他社と比べてVCの形を変えることは、差別化要素となり得る。それは同じVCの形で、その内容の細部で差別化を図るよりダイナミックな違いを打ち出すことができるようになる。
物理的な壁を壊したキリン流の「ワイガヤ」が、いわゆる「タバコ部屋のコミュニケーション」や「飲みュ二ケーション」のような、インフォーマルなレベルまでの融合が図れればさらにユニークな動きが出てくるだろう。その時の話題は、「全員が顧客の顔を思い浮かべながら」であることになるだろう。
組織は放っておけばどんどん硬直化する。キリンのアプローチを参考にできる企業は多いだろう。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2009.02.10
2015.01.26
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。