菅総理による震災対策への自衛隊投入と、復興に100億円を寄付する孫社長。 戦略観の違いは明らかです。
戦略における最も稚拙な選択肢の一つが「戦力の逐次投入」と言われます。
震災直後から、阪神大震災で自衛隊投入を渋ったことで、被害が拡大したと言われる村山元総理のテツを踏まないようにと、2万人の投入がされました。即時投入はは悪くありませんが、その規模は5万人、10万人と、倍々に増えていきました。
こうした激甚災害で、やはり頼りになるのは軍隊のようなオーダー(規律と統制)であり、災害出動はわが国自衛隊の得意とする分野だと思います。しかしながら総司令官である菅総理のこのブレブレぶりが、現場で命をかける隊員の皆さんにはどれだけ邪魔なのか、と心配してしまいます。
正に絵に描いたような戦力逐次投入っぷりでした。
もちろん未曽有災害ということですし、単に投入量を見誤っただけを批判しているのではありません。菅総理の大局観の無さ、戦略的視点の無さに、今さらながら呆れ返るしか無い今の状況が何とも悔しく思います。
大戦力を投入、展開することは、それだけで安心感というメッセージになります。まして地震でオーダーが崩れた被災地に、オーダーの象徴である自衛隊が展開、というのはもちろん現地の対応等簡単ではないとは思いますが、やはりアナウンスすることが大切と思うのです。まず大方針を決定し、部隊の展開は後で、という技術的な選択肢はいかようにも出来ます。
あらためて指導者として、菅総理の資質の無さを嘆きたい気持ちです。
ソフトバンクの孫社長は早々と被災地支援の寄付を発表した財界人の一人ですが、当然孫氏以外にも寄付を申し出た方々はおられます。ノブレス・オヴリージェとして、金持ちの姿勢として、ありがたい一方、一切ノーコメントで毎朝テレビで金儲けしてる大富豪司会者からは何も聞こえませんが。
ここまでは普通でした。もちろん何千万、何億というお金を払ってもらうことは、絶対的に正しいことであり、それが広告効果やイメージ戦略だとしても、その実質的利益の前には、何の問題もない美しい行為だと思います。
ところが、さらに追加して、他を圧倒する100億円の寄付+アルファというサプライズが孫氏から飛び出しました。正直ソフトバンクという会社のあり方や、経営自体には(投資ファンドとしての効率ではなく、事業経営面)疑問を感じていました。しかし100億という圧倒的な数字の前には何一つ文句はありません。
個人資産1000億とも言われる孫氏。100億寄付したって900億残る?かも知れません。しかしそんなことは関係ないのです。
正にこれまでの負のイメージを、一発で払拭できる豪快な一打だったと思います。戦略的判断とは、正にこれでしょう。何も出来ない菅政権はぜひ孫氏に国民栄誉賞とか大勲位の勲功を与えるべきです。
もし100億で栄誉が得られるなら、と金持ちが続いてくれたら、それこそありがたい話ではありませんか。
私は心底孫氏の行為を賞賛したい気持ちでいっぱいです。
100億という資産を、最高の効率で生かしたそのセンス、これまでのイメージをすべて挽回する素晴らしい戦略的投入だと思います。
戦略思考シリーズ
2012.10.09
2011.06.06
2011.04.06
2011.01.04
2010.12.20
2010.11.18
2010.08.05
2010.07.27
2010.04.23
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。