「カチッ・サー理論」と取り組み事例

2011.02.05

営業・マーケティング

「カチッ・サー理論」と取り組み事例

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

先日、ビュー・コミュニケーション(NPO法人)が主催する[ECS研究会 実証実験 成果発表会]に出席してきました。同法人は、顧客満足度指標(CSI)をはじめとする各種評価事業を行なっている団体です。なお、‘ECS'とは、拡張された顧客満足度の意味です。(Extended Customer Satisfactionの略称でしょう)従来のCSの概念ではカバーできない領域を指標化しようとする試みのようです。

第2位の多数性とは、「今これが一番売れています」といった他の人の評価をお客さんに伝えることです。「他の人も買っているのならきっといいんだろうな」といった、「多数派の意見・行動」に同調しがちな人間心理をうまく刺激するのがうまい人ほど、販売力があるということになります。

そういえば、先日の新聞記事で読んだのですが、ビックカメラの販売員の方の話によると、店頭セールスのコツの一つとして、「最近売れている商品はですね・・・」と周囲の人にも聴こえるように大きめの声で説明すると、自分の周りにたくさんのお客さんが集まってきて、芋づる的にたくさん商品を売ることができるそうです。皆、自分以外の人が何を買っているか、つまり、売れ筋って気になるものですよね。

第3位のお世辞。多少薄っぺらい、歯の浮くようなお世辞だとしても、言われた方の気分は悪くないものですよね。優秀なセールスパーソンは、上手にお客さんを褒めること、つまり持ち上げること」ができる。そうしてお客さんの気分をよくさせて、クロージングに持ち込めるということでしょう。

以上の分析結果を読んだ方の中には、「なんだ、どれも当たり前のことだよね・・・?」と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、大事なのは、売れるセールスパーソンと売れないセールパーソンの違いが何かを明確に把握し、的確な改善施策を打てるようになることなのです。

実のところ、トップセールスの多くは、「なぜそんなにキミは売れるの?」と聴かれてもうまく言葉で説明できないのです。「なぜだか売れちゃうんだよね」としか言えない人が多い。従来は、結局、販売力の違いは、「センスの良し悪し」で片付けられていたのです。

ですから、セールス研修でも、せいぜい礼儀作法やセールストークのロールプレイをやるだけ。「カチッ・サー理論」のような、対人関係心理に基づく、効果的な販売増につながるセールス方法を学ばせることはほとんどやられてこなかったというのが実情なのです。

さて、話を元に戻しますが、K社では、調査結果を元に、カチッ・サー理論をベースとしたセールス活動のあり方についての研修を開始しています。心理スイッチに関連した販売ノウハウのあぶり出し、その共有化を図っているところです。前述したように、まだ成果を検証できるところほど時間が経過していませんが、今後に大きな期待をかけているとのことでした。

というのも、自動車自体で明確な差別化を図ることはもはや難しく、結局のところ、「セールスパーソンという人間をまず売ること」ができなければ、自動車は売れないという厳しい現実があるからです。

特定非営利活動法人ビュー・コミュニケーションズ
http://www.viewcom.or.jp/index.html

『影響力の武器 第二版 なぜ人は動かされるのか』
(ロバート・B・チャルディーニ著、社会行動研究会訳、誠信書房)

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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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