「カチッ・サー理論」と取り組み事例

2011.02.05

営業・マーケティング

「カチッ・サー理論」と取り組み事例

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

先日、ビュー・コミュニケーション(NPO法人)が主催する[ECS研究会 実証実験 成果発表会]に出席してきました。同法人は、顧客満足度指標(CSI)をはじめとする各種評価事業を行なっている団体です。なお、‘ECS'とは、拡張された顧客満足度の意味です。(Extended Customer Satisfactionの略称でしょう)従来のCSの概念ではカバーできない領域を指標化しようとする試みのようです。

8 社会的証明

他者がどうしているかに基づいて、自分の行動を判断してしまう心理。「これが一番人気ですよ」と言われると、自分も欲しくなるようなこと。

9 権威性

権威がある人は、自分よりもある分野において知識があり、その人に従うことが自分にとって利益になる」ということを知っているから、無意識に服従してしまう心理。資格や肩書きが立派な相手をむやみに信用しがちなのは、この権威性によるもの。

10 希少性

機会を失いかけると、それはより価値があるものだと感じてしまう心理。テレビ通販などで、限定100セットなどと言われると、「売り切れる前に買わなきゃ」と、たいして欲しいものではなくても急いで買いたくなってしまうようなこと。

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上記10項目は、販売やサービスの現場で多くは、経験則的に、つまり無意識に適用されており、優れたセールスパーソン、サービス提供者はこれらをうまく活用できている人々なのです。ただ、こうして「形式知」として体系化され、伝授されることが今までほとんどなかったというのが現実なんですね。

では、「カチッ・サー理論」を実務に応用している自動車販売会社(セールスパーソン対象)の取り組み事例をご紹介します。ただし、取り組み始めてからまだ数ヶ月が経過したばかりであり、明確な成果報告が行なわれたわけではない点をあらかじめおことわりしておきます。

神奈川県の大手自動車販売会社、K社には、いわゆる「セールスパーソン」が約500人います。K社では、このうち30人のセルースパーソンを選抜、彼らの顧客各30人に対してアンケート調査を実施し、自分の担当セールスパーソンについての評価をしてもらいました。(回収サンプル数合計900件)

評価項目は、上記心理スイッチの10項目です。そして、アンケートで得られた心理スイッチの評価点と、各セールスパーソンの販売台数との関係性を分析したのです。その結果、セールスパーソンの販売力と最も正の相関が高かった上位3項目は以下でした。「正の相関が高い」というのは、上記の項目に対する顧客からの評価が高いセールスパーソンほど、車をたくさん売っているということです。

1 類似性
2 多数性(社会的証明のこと)
3 お世辞

第1位の類似性というのは、この場合、顧客とセールスパーソンになんらかの共通点があることです。生まれた場所や出身学校が同じだとか、どちらもサッカーや野球が好きだとか。おそらく、優れたセールスパーソンは、お客さんとの会話を通じて共通点をたくさん見出し、それを会話のネタとすることで好意度を高めているのでしょうね。

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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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