あるべき姿の描き方

2007.10.15

経営・マネジメント

あるべき姿の描き方

森川 大作
株式会社インサイト・コンサルティング 取締役

いったいどうすればあるべき姿を描けるんですか?とよく聞かれます。 現状(As Is)は描けました。でも、いざTo Beを考えようと思っても・・・。 閃きとたくましい想像力・創造力が必要だと思われているのかもしれません。 To Be思考を3つに分解して考えてみましょう。

思考する(Think)には、<分別>、<識別>、<洞察>3つの水準があると考えます。
<分別>とは正邪・善悪・真偽などの二項対立関係にあるものについての判断。
<識別>とは隣接する概念、近似の物事についてその差異を認識すること。
そして、<洞察>とは、物事の背後の本質、根源を理解すること。

<分別>は、何が善くて何が悪いのか?を考える。
As Isを分析していると比較的早い段階で大筋の善し悪しは見えてくるものです。
だからと言って、思考が<分別>に終始すると、To Beが自明の理に陥ってしまいがちです。
正論は正論だけれども、それができないから困っているんじゃないかという声が聞こえてきます。
最初からTo Beが頭ごなしに決まっている/決めている場合も同じです。
それで終わってしまうと、As IsからTo Beへと思考過程を踏んだ意味がないというわけです。
むしろ、分別が必要なのは、みんなわかっているけどTo Beを貫けないときです。
総論賛成、各論反対は世の常です。反対のための反対があるときなどは挑戦です。
既得権益に寄生する風見鶏がたくさんいると大変ですね。
正しいことは正しい、そのためにはこれだ!というブレない信念つまり正しい分別が必要です。

<識別>は、どのように同じで違うのか?を考える。
To Beを考えるときに、流行や一般通念に思考を丸めてしまい、いわゆるきれいにまとめてしまう。
識別を怠ると、一見カッコいいTo Beができますが、思考が曖昧のまま進むので、曖昧なTo Beに。
曖昧な根拠=As Isからは、曖昧な筋=論理しか成り立たず、
そこからは曖昧な主張=To Beしか出てこないのです。
ただし、識別に終始すると、To Beではなく、単なる調整に陥りがちですから要注意。
チェンジリーダーたるべき人が、ものごとの調整だけに甘んじても、新たな価値は創造できません。
規制を盾にとって、ダメダメ尽くしで標準化するなど、識別せずに体よくまとめるなどは困ります。
曖昧さをなくし、何がどう違うのかを明快にする潔い識別が必要です。

そして<洞察>が必要です。その先には何があるか、どうしてそうなっているか、つまりなぜか?を考える。
思考は分別から識別へ、識別から洞察へと至らねばならない、
つまり本当の意味で考える人になるべきだということです。
奇しくも、INSIGHT NOW!=今洞察ですね。
洞察すると、二項対立的関係の整理や、差異の分析を超えて、
物事の根源的・普遍的な性質を捉えることができるようになります。
そうすれば、真のTo Beを描くことができるのです。これに尽きます!
EAの普及やJ-SOXの実施に伴い、To Beモデルの記述法が論じられることがあっても、
そもそもTo Be思考については、やはりKnow-Howはないのです。なぜならKnow-Whyが本質だから。

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森川 大作

株式会社インサイト・コンサルティング 取締役

わたしはこれまで人と組織の変革に関わってきました。 そこにはいつも自ら変わる働きかけがあり、 異なる質への変化があり、 挑戦と躍動感と成長実感があります。 自分の心に湧き上がるもの、 それは助け合うことができたという満足感と、 実は自分が成長できたという幸福感です。 人生は、絶え間なく続く変革プロジェクト。 読者の皆様が、人、組織、そして自分の、 チェンジリーダーとして役立つ情報を発信します。

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